SD通信企画
『私を創ってくれた3つの作品』
スペースデザイン部メールマガジン「SD通信」では毎回作家ご自身の創作の中から特に記憶に残る作品やターニングポイントとなる作品を3点選びコメントしていただいています。
制作への想い、こだわり、当時の思い出、作品の発想のきっかけや技法や素材のことなど、会員同士でもあまり知らなかったような貴重なコメントが毎回登場いたします。素材や技法、展示の方法が多岐にわたるスペースデザイン作品の魅力を更に感じていただけると思います。
※上下にスクロールすると作家の記事が続き、左右にスライドすると作品が変わります。
Vol.35 大木 敦子( Ohki astsuko)
大木 敦子 プロフィール
2002年 東京家政大学 家政学部 服飾美術学科美術専攻(現・造形表現学科)卒業
2010年 新制作展 初入選 (’11年を除き以降毎年入選)
2010年 テキスタイルアート・ミニアチュール展(以降5回出品)
2017年 個展 ギャラリー・イン・ザ・ブルー
2019年 新制作展 新作家賞受賞
2021年 新制作協会 会員推挙
他、グループ展など多数
現在 東京家政大学 家政学部 造形表現学科 講師
『限りなく水は流れる』(2010年)
第74回新制作展入選作品(W90×H195)
技法:織
素材:ウール・リネン・レーヨン他
自然界で絶え間なく循環する水のイメージをコーデュロイ技法で表現した作品です。コーデュロイは浮いている緯糸をカットして仕上げるため、ベースの織の表情が見えてくるところが特徴で、織上がった時と仕上げ後のイメージが大きく変わります。その分、ハサミを入れる時の緊張感はなかなかのものです。織物でタペストリーを制作したのは久々だった作品。織の面白さは技法の制約の中にどれだけ自分の表現を盛り込めるかだと思っています。精緻なデザイン計画が必要である一方でどこかを崩して表現したいと思う葛藤の中で取り組んだ作品でした。無数にある織の技法の中でもようやく自分でコントロールができてきたと実感し、改めて織の魅力を感じた作品でした。
『重ねた刻』(2012年)
第76回新制作展入選作品(W110×H170)
技法:フェルト
素材:ウール・ジュート麻
自然界にあって時間と共に変化するもの、失われていくもの、朽ちていくものに魅力を感じています。この作品はその時間の経過と表面の物質感をテーマに制作しました。この頃から技法を選ぶことよりも、自分の表現したいものにシンプルに向き合おうと考えるようになりました。フェルトは時に自由すぎて苦しむことがあるのですが、フェルトだからこそできる成型の方法や特徴があります。フェルトの表面を「削り取る」という行為自体が腐蝕されゆく物質の変化とリンクしているように感じ、作品に組み込みました。
『追憶』(2021年)
第84回新制作展入選作品 (W180×H290)
技法:織・フェルト
素材:ウール
織とフェルトの組み合わせをしばらく続けて制作していましたが、素材にもう一度しっかり向き合うという事に立ちかえるようになりました。染める、紡ぐ、織る、フェルトにする。どの工程でも真剣に向き合えば向き合うほど、素材の魅力と時には難しさを発見し、改めて面白いなあと感じています。
Vol.34 おおひら よしこ( Ohhira yoshiko)
おおひら よしこ プロフィール
北海道生まれ
1989年 北海道芸術の森クラフト展
1990年 工芸都市高岡クラフト展
東京デイリーアートコンペ展
1992年 伊丹クラフト展
北海道芸術の森クラフト展
1996年 トルコでフェルト作りを学ぶ
1997年 丸善HAT・HAT・HAT展
1998年 丸善HAT・HAT・HAT展
1999年 インターナショナルフェルトシンポジウム出席(フィンランド)
2000年 パキスタン・アフガニスタン国境地帯を旅する
ギャラリーテン2人展
2001年 インターナショナルフェルトシンポジウム出席(キルギス)
中央アジア、フェルトと羊をめぐる旅をする(ウズベキスタン、トルコ)
ギャラリー西利(京都)個展
東京ワークハンド2002
新制作展初入選
2005年 ギャラリーゼフィール個展
2006年 東京メトロポリタンアート展
新制作展 第80回記念賞受賞
『inner voice』
2002年 新制作展初出品 初入選作品
私が独学でフェルトを作り始めてから20年余り過ぎていました。
フワフワした羊毛が自分の手で強靭なものになるのは不思議で楽しい。身につけて使えるフェルトを作っていました。フェルトは紀元前から作られていたし、人間と羊は深く関わってきた歴史があります。フェルトの作り方は原始的な方法で、今も変わらない。羊毛という素材を生かして自然から感じたことを表現したいと思っています。羊毛の上に、絹・麻・綿など異素材をのせてフェルトにしました。其々の個性を際立たせるように羊毛の表面に出した作品です。ノマドなフェルトとは異なる、現代に生きていくフェルトを表現していきたいと思って制作しました。
『Noa』
2016年 新制作展 第80回記念賞受賞作品
羊毛を重ねて少量の水分を加えて羊毛を摩擦することで、
羊毛が絡み合ってフェルトになります。布に羊毛をフェルトにすると、接着の効果が出せます。充分にフェルトになると着彩も上下の色が混ざり合い絵の具を重ねたような効果が出来ます。アイデアを実験していく中で出来た作品です。ノアの方舟に羊が乗っていたことに感謝して作りました。
『絡合 entanglement』
2021年、コロナ禍が世界中の人々を恐怖に陥れました。人と会えない日々の中で、作品を通して現在出来ることは何か、伝えなければいけないことは何でしょう。すべてのことが関連している。宇宙にある全てのものは、絡み合う力を使って生命を繋げていくはず、そのような思いを表現しました。羊と人間の関わりは紀元前からです。
羊やフェルトが出てくる歴史上の話は大変興味深いものが沢山あります。これからの地球、世界で、持続可能な素材としての羊毛は有るのか。もう既にウール100%のセーターは高価なものとなり、市場から消えつつあります。荒れ狂う地球環境の中で示されていることを感じて、何をすべきかを考えなければいけないと思います。羊毛文化のフェルト、じゅうたん、衣服を残していくために。
Vol.33 五十嵐 史帆( Ikarashi shiho)
五十嵐 史帆 プロフィール
東京都生まれ(新潟県上越市在住)
2004年 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程)修了
2004年 第68回新制作展スペースデザイン部門 初入選
2007年 「現在の造形-Life&Art-展」 (東広島市立美術館/広島)
2009年 上越教育大学大学院(美術科教育)着任(現在に至る)
2010年 第49回日本クラフト展(丸ビルホール/東京)
2013年 第77回新制作展スペースデザイン部門 新作家賞受賞(同 2018年受賞)
2019年 新制作協会 会員推挙
題 名: 「樹」制作年: 2006年
サイズ: H2100×W1500×D1000mm
素 材: 紅松、竹
大きくて華奢なものをつくりたいという挑戦からはじまったのですが、板に穴を開けるのが楽しくなり、上部にいくにつれ穴の数が増えていきました。木片を竹のピンで組み合わせただけの作品なので会場で移動した際に崩れ、たくさんの人に支えて(押さえて)もらって展示したのが思い出です。その後、木片を足したり組み替えたりして古民家でも展示を行いました。制作だけでなく、運搬・展示を強く意識させた作品です。
題 名: 「a bag 02」
制作年: 2013年
サイズ: H2000×W600×D600mm
素 材: 榁、ワイヤー、水性塗料
直径約50mm,厚さ7mmの榁(ムロ)の木片を繋いだ作品です。木片の繋ぎ方や自重で緩やかに凹ませ、有機的なイメージをめざしました。前作の01よりワイヤーを通す位置や向きを調節し、木片ごとに穴などで変化をつけ、木片を単なる部品でなく一つひとつが表情を持つよう試みました。公募搬入2日前の夜中に「かたちが気に入らない」からとほぼ全て解体してしまい地獄を見た苦い思い出がありますが、その甲斐あって新作家賞をいただきました。妥協せずによかったと思うと同時に、夜中に制作することはやめようと心に誓うこととなった作品です。
題 名: 「Cocoon 2020」
制作年: 2020年
サイズ: H200×W300×D300mm
素 材: 林檎、綿糸、塗料
直径約26mm,厚さ1.6mmの林檎の木片をゆるく湾曲させて繋ぎました。SDのミニアチュールに出品した小さい作品です。それまで、作品をいかに大きく見せるかということにしばられていたところがありましたが、前年の受賞作家展の際の会員の方々からのアドバイスから、小さくても魅力ある作品を作りたいと思うようになりました。自分の気持ちや身体、今の状況(生活)と「作品で表現すること」が無理なく重なっているのを感じ、自分の制作のスタイルが(やっと・・・)見えたような気がしている作品です。
Vol.32 若松 美佐子( Wakamastu misako)
若松 美佐子 プロフィール
<職歴>
1974 大塚テキスタイル専門学校卒
1975 (株)アートセンター 入社 手織・手編材料 製品の企画制作担当
2017 同社 常務取締役退職
現在 東京アートセンター講師、東京YMCA福祉専門学校非常勤講師
新制作協会会員
<グループ展>
1979 第1回テキスタイル展 (以後銀座にて隔年に通算20回開催)
2002 日本全国裂織展
2001 ファイバーアート展Ⅰ ファイバーアート展Ⅱ (2003)(ワコール銀座アートスペース)
2004 新制作協会 初出品初入選
2007 日本現代テキスタイルアート展(日本・イラン・トルコ)
2010 新制作協会 会員推挙
2011 日本現代ファイバーアート展 (日本)(‘87より11回開催)
2012 第9回ウクライナ国際現代ビエンナーレ (ウクライナ)
2013 第6回 国際ミニアチュール展 (ウクライナ)
2014 アメリカン タピストリー ビエンナーレ 10 (アメリカ)
2015 第17回 国際ミニアチュール展(スロバキア)(‘13 第16回に参加)
現代日本ファイバー スカルプチャー ミニアチュール展 (アメリカ)
第9回 国際テキスタイル ミニアチュール ビエンナーレ(リトアニア) (‘13に参加)
2016 第7回 国際ウクライナ ミニアチュール展 (ウクライナ)(‘13 第6回に参加)
現代日本ファイバー ミニアチュール展 (サラマンカ・マドリード・ブラチスラバ)
2018 国際トリエンナーレ展 Art of Today(スロバキア)(‘12・’15)
2019 ミニアート テキスタイル展 コモ (イタリア)(‘06・’11)
テキスタイル アート ミニアチュール (日本)(‘10、11、’13、’15、’17)
ハンド モールディングⅡ (いりや画廊) (ハンド モールディングⅠ ‘17 銀座美庵)
2022 第14回 国際テキスタイル ファイバーアートビエンナーレ展(ウクライナ)
<個展>
2005 「CLOUD」(ワコール 銀座 アートスペース)
2007 「層奏」(ワコール 銀座 アートスペース)
2012 「まる・まる・まる」 (銀座 画廊るたん)
2021 「さぁー これからは 」(入谷画廊)
題 名: Complication(葛藤)
制作年: 2011
サイズ: H280 x W130 x D5
素 材: 絹布・麻糸
織物を、経糸と緯糸が様々な技法で交わり構成される四角い平面と認識していましたが、そんな平面に、ある意思を表すような有機的なエッジを持った形に仕上げ、更に時間の経過や様々な事象を盛り込みたいと願い何層かに重ねてみました。何かを想い、あがいている様子が表現できればと願いつつ。
題 名: Undulation(うねり)
制作年:2019
サイズ: H100 x W310 x D13
素 材: 絹布
糸や布を織る作品が多いですが、織機から離れて様々な素材を用いた制作も続けています。絹布をいろいろな加工をすることによって(私の意識の外で)どの様な表情を見せてくれるかを実験した作品です。現れたこの表情の中に表現したかったことは、平和な日常の何気なく思う事柄の重なり連なりやむことのない時の流れ、“揺らめき“です。
題 名: Family Ⅱ (家族)
制作年: 2021
サイズ: H195 x W260 x D5
素 材: 絹布・麻糸・綿糸
コロナ禍となり、ぽっかりと空いた日々。世界の英知が、過去と未来を語る。
初めて聞く単語・初めて聞く事柄・初めて聞く状況 等々。
1回聞いたところで理解できない。
2回・3回と、必死に理解しようと努力する。
さー これからは と思った時に、意図することなく、何の躊躇いも無く私の手からすらすらと出てきました。
Vol.31 吉田 淳子(Yoshida junko)
作品作りは織物から始まり、山口和加子さん(SD通信Vol.30)と同じ先生に師事しました。素材を織から和紙に変え、平面でも立体でも表現可能な和紙の持つ魅力に惹かれ制作するようになりました。新制作展に出品した表現方法の違う3つの作品を紹介します。
吉田淳子 プロフィール
茨城県生まれ
文化女子短期大学卒
新制作協会会員
1982 グループハンク(松屋クラフトギャラリーなど)
1987 工芸都市 高岡87’クラフト展金賞受賞
1988 工芸都市高岡88’クラフト展入選
1990 山口和加子 吉田淳子展(ワコール銀座アートスペース)
1993~ 新制作展出品 (山口和加子・吉田淳子 共同制作)
1995 第59回新制作展 新作家賞受賞 (山口和加子・吉田淳子 共同制作)
1996 山口和加子 吉田淳子展(ワコール銀座アートスペース)
1998 ORIE現代アート100 (草月ギャラリー) (山口和加子・吉田淳子 共同制作)
素材を追って 繊維によるこころみ98 (世田谷美術館) (山口和加子・吉田淳子 共同制作)
1999 山口和加子 吉田淳子展(ワコール銀座アートスペース)
2000 新進作家タピストリー6人展(ORIEギャラリー)(山口和加子・吉田淳子 共同制作)
第21回インパクトアートフェスティバル(京都市美術館)(山口和加子・吉田淳子 共同制作)
2001 山口和加子 吉田淳子展(ワコール銀座アートスペース)
2003 素材でつくる空間 FIBER WORKS “山荘”(リビングデザイン)
2006 素材との出会い-fiber・textile 5人展- (銀座画廊るたん・ 益子 kyohansix galley)
2008 山口和加子 吉田淳子展 和紙による造形 (千疋屋ギャラリー)
ミニアートテキスタイルコモ入選(イタリア) (山口和加子・吉田淳子 共同制作)
2011 グループ展-ファイバーの世界で (千疋屋ギャラリー)
2014 グループ展 Reconsider (いりや画廊) (2016、・2018・2020年)
「水と光のシンフォニー」1995年
第59回新制作展 新作家賞受賞
共同制作 山口和加子 吉田淳子
W130×H300×D7
1993年に山口和加子さんとの共同制作で出品し、この年に新作家賞を受賞した作品です。
共同制作は和紙を素材に、テーマ・デザイン・テクスチャーを話し合い、一つ一つ積み重ねながら制作していきました。この作品は、水の流れや水面にさしこむ光を、和紙を巻いた紙バンドをねじったり、凹凸をつけて表現しました。私にとっては、その後の制作に力を与えてくれた1点です。
「極光」2016年
第80回新制作展出品
W125×H300×4
「極光」は、これまでは直線的なデザインが多かったのですが、前回の新制作展から曲線を意識して和紙を巻いたワイヤーを組み合わせて連続させた作品で、オーロラの色をイメージし制作しました。
「流景」2016年
いりや画廊 グループ展
W60×H100×D3
「流景」は、いりや画廊でのグループ展に展示した作品で、同じテクスチャーで水の流れを8点で構成しました。以前は、山口さんとの二人展が作品の発表の場でしたが、最近はグループ展が発表の場になっています。
「万華鏡」 2019年
第83回新制作展出品
W220×H130×D3.5
この作品は、折り紙または折形という和紙で進物を包むときの方法や祝儀袋などからヒントを得て制作し、折り重ねた時に出来た空間と色の移り変わりを表現しました。和紙の持つ暖かさや染めた時の風合いを感じつつ、新たな技法や表現方法を見つけながら制作したいと思っています。
「折形」2020年
いりや画廊
この作品は、折り紙または折形という和紙で進物を包むときの方法や祝儀袋などからヒントを得て制作し、折り重ねた時に出来た空間と色の移り変わりを表現しました。和紙の持つ暖かさや染めた時の風合いを感じつつ、新たな技法や表現方法を見つけながら制作したいと思っています。
Vol.30 山口 和加子(Yamaguchi wakako)
私の作品は、素材に和紙をつかって、デザインのイメージに沿って、いろいろな表現方法を使っています。1人で作品を作っていた頃の作品、吉田淳子さんと共同制作で作品を出品した頃の作品、新制作会員になってからの最近の作品と、それぞれの時代から、3つの作品を選びました。
山口和加子 プロフィール
東京生まれ
共立女子大学 生活美術学科卒業
1982年 グループハンク(松屋銀座クラフトギャラリー)(1982年~1992年)
1985年 新制作展初出品(1987年)
1986年 ドイツJUGEND JUSTALER展入賞
1990年 山口和加子・吉田淳子展(ワコールアートスぺース)(1996・1990・2001・2005年)
1993年~ 新制作展出品(山口和加子・吉田淳子共同制作)(1995年 新作家賞受賞)
1998年 素材を追って-繊維によるこころみ (世田谷美術ギャラリー)
ORIE現代アート100(草月ギャラリー)
2000年 新進作家タペストリー6人展 (ORIEギャラリー)
2005年 TEXTILE 05 KAUNAS ART BIENNIAL (リトアニア)
2006年 素材との出会い-5人展(銀座画廊るたん・益子kyouhansix galley)
2008年 ミニアートテキスタイルコモ(イタリア)
2011年 グループ展 ファイバーの世界で(千疋屋ギャラリー)
2014年 グループ展 Reconsider(いりや画廊)(2016・2018・2020年)
新制作協会会員
『群青』
1985年 新制作展出品
W150×H250×D6
新制作展に最初に出品し、入選した作品です。大学時代からずっと織物制作を続けていましたが、糸だけではなく、いろいろな素材を使う事に挑戦する時期があり、その過程で、和紙に出会いました。薄い和紙を織り込んでマフラーを織ったりしましたが、織機にこだわらず、和紙をつかって作品を自由に作り始めた時の最初の作品で、指示していた先生に新制作に出してみたらと言われ、初めて出品しました。新制作協会との出会いの作品で、今の私の原点の作品です。自由に形を作れる和紙に魅了され、現在に至るまで長い間、制作し続けています。
『wave-朝焼け』
1994年 山口和加子 吉田淳子共同制作
W5000×H1450×D170 麻布美術工芸館
吉田淳子さんと共同制作で、1993年から新制作展に出品しました。この作品は、2人で作品を作り始めて初期の頃の作風で、紙バンドに染色した和紙を貼り、組んだりして構成しています。この頃は、箔も使っていました。2人で作っていたので、まず、自然の風景や景色の写真などからイメージを取り、デザインを話し合い、パーツをそれぞれで作ってきて、合わせるようにしていました。共同制作で、何作も出品したのは、私達だけだったので、いろいろご意見も頂きましたが、感性が似ているのか、ぶつかることもなく制作することができたと思っています。
『波のように』
2015年 新制作展出品
W230×H360×D8
新制作の会員になってから、吉田さんとの共同制作は、2人の住まいが遠いことから時間を合わせて一緒に制作することが難しくなってきました。そのため、1人で作り始めて、素材は和紙やその他の紙やアルミなど、作品によって自由に選んでいます。
この作品は、波がはじけた時の水の透明感を表現したくて、薄紙を使いました。2本の竹ひごを組んで、薄和紙は、染めてからこんにゃくのりで強度を付けて、竹ひごのべースに貼っていきます。のりが乾いた時に計算できないそりが生まれます。それを重ねていくと空間ができ、そこに空気感も生まれました。その後、変化を楽しみながら、この技法で何作か創りました。
私の作品は、1つの単位をいくつか重ねて、表現することが多いと思います。
これからも、表現方法にこだわらず、いろいろな素材と組み合わせて、作品を作り続けていきたいと思っています。
Vol.29 前田 亮二(Maeda ryoji)
前田亮二 プロフィール
1974 愛媛県松山市生まれ
2001 大分県立芸術文化短期大学 美術専攻科(染色)修了
2002~ 新制作展(‘04’06新作家賞、‘09会員推挙)「東京都美術館、国立新美術館/東京」
2006 第19回全国染織作品展(佳賞)「シルク博物館/神奈川」
2007 京展(楠部賞)「京都市美術館/京都」
2012 テキスタイルの未来形「網走市立美術館/北海道」
2013 MINIARTEXTIL「コモ/イタリア」
2019 テキスタイルアート・ミニアチュール展6「Gallery5610/東京」
2021 テキスタイルの未来形「宝塚市立文化芸術センター/兵庫」
2021 テキスタイルアート・ミニアチュール展7「Gallery5610/東京」
その他個展、グループ展多数
Japan Textile council 会員
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師
こちらのサイトで作家紹介をしていただいています。
JapanGallery (japan-gallery.jp)
「WORK00」(2000年) H2000×W900
素材:綿布、染料
この作品は私が大分県立芸術文化短期大学の修了制作展で制作した作品です。本学で初めて染色を学びそこで習得した技法をこの1枚の布に集約しました。思いのままに好き勝手に楽しみながら染色し、そのおかげで様々な染料の変化、表現を体感しました。この1枚の布の中の表現で自身にあっている、面白いと思った箇所をピックアップして次の作品につなげる。私の制作の原点となる作品になりました。
「ヌクモリ」第70回新制作展(2006年) 各H450×W450
素材:シルクオーガンジ、綿布、染料
薄い生地、透ける生地も染色の特徴と考え、その重なりによる色の表現に染色ならではの美しさを確認しました。染料による柔らかく、優しい色の表情を研究していこうと決めた作品です。
「Square」(2020年) H400×W400×D120
素材:シルクオーガンジ、綿布、綿糸、染料
2017年恩師である吉村正郎先生が急逝しました。亡くなる当日の昼食も一緒にとり、いつも通りのたわいのない話を元気にしていましたが、その晩急に倒れて、突然の事でした。制作も遊びもすべて学んだ、本当に感謝しかない存在です。先生の作品整理や家の片付けをしている際に作品に使用していた大量の綿糸が出てきました。その綿糸を自身の作品に使いたいと思い、今までは薄い布を平行に並べて層で見せていた作品に奥行きを表現する1本の糸を入れることにしました。この「Square」は試行を重ねて現在はシリーズとして研究している作品です。
Vol.28 藤原 幾三(Fujiwara ikuzo)
藤原幾三 プロフィール
1946 大阪に生まれる
1970 東京芸術大学美術学部日本画卒業
1970㏍河合紀陶房に入社
〜74 河合紀氏に師事し、陶板レリーフ制作
1971 日本美術院春季展初入選
1972 日本美術院秋季展初入選
1975 独立 益子陶飾にて陶板レリーフ制作
1983 第4回北関東美術展入選
藤原陶房を設立
1988 栃木の作家達展出品(栃木県立美術館)
1989 新制作スペースデザイン入選
1990/91 陶のコンテンポラリー笠間における新しい造形展(笠間日動美術館)
1992 陶壁作品集(京都書院)出版
1992/93 新制作スペースデザイン新作家賞受賞
1993 あかりと空間展(梅が丘アートセンター)
日本と海外現代作家タペストリー彫刻展(草月会館)
新制作・新鋭作家展(東京銀座 ホリ・ギャラリー)
1994 交感する陶とガラス展(渋谷 ギャラリー煖)
六人囃子展(益子 佳乃や)
新制作スペースデザイン会員推挙
1995 千葉市美術館ファサード
レリーフコンペ佳作入賞
陶彫邪鬼展(益子 佳乃や)
以後、隔年開催
1996 テーブルウェアコンテスト入賞(東京ドーム)
日本現代陶彫展特別賞受賞(土岐市)
1997 陶彫邪鬼展(岡山 天満屋・新宿)
2000 ジョーモネスクジャパン展(新潟県立歴史博物館)
坐-ZA-展(渋谷 ギャラリー煖)
2001 陶彫邪鬼展(鹿沼 ギャラリータスタス) 以後、三年毎開催
2003 邪鬼-藤原郁三陶彫集(叢文社)出版
陶のあかり展 (宇都宮 ギャラリー・イン・ザ・ブルー)
陶彫邪鬼展(大阪 阪急百貨店・高松、米子 天満屋)
2004 陶彫邪鬼展(益子 つかもとギャラリー)以後、三年毎開催
日本現代陶彫展特別賞入賞(土岐市)
タイルデザインコンテスト優秀賞(ダントー株式会社)
2005 日仏現代陶芸交流展(益子 kyohan six gallery)
2007 「発光するかたち」展(益子kyohan six gallery/宇都宮ギャラリー悠日)
パリ日本陶芸展(エスパスベルタンポワレギャラリー Paris France)
I.E.A.C.ヨーロッパ陶芸協会 (Guebwiller France)
大陸に於ける韓国と日本の陶芸2007 展
2008 East&West展(益子 陶芸美術館)
栃木に潜むチカラ展(益子 陶芸美術館)
2010 East & West Clay Works 展(Princeton U.S.A)
2011 「蛍硝子 器と灯り展」(鹿沼 シェイ ケイコ)
2012 蛍硝子が第4回ものづくり日本大賞 優秀賞受賞
2013 East&West展 出品(USA New Jersey)
2014 作陶40周年・つかもと創業150年記念陶彫邪鬼展(つかもとギャラリー)
2015 藤原郁三 環境陶芸展(東大阪市民美術センター)
2016 陶彫邪鬼展(宇都宮 ギャラリー壺琳)
2017 Ikuzo Fujiwara Environmental Ceramic Art Exhibition (Dublin Arts Council Ohio USA)
「益子における焼締陶」展(益子陶芸美術館)
2019 アルゴノート第36回企画展藤原郁三展(グラスハウスアルゴノート)
藤原郁三の仕事-大地のロマンを求めて
道の駅ましこ企画展示(栃木、道の駅ましこ)
「陶壁-栃木県陶壁事情」本 (文星芸大出版)
2020 鳴動と静謐〜藤原郁三 野村義照 二人展(田中八重洲画廊)
藤原郁三「邪鬼」展(鹿沼 ギャラリータラッサモモ)
現在 新制作協会会員 栃木県新作家集団会員
「空への階段」 日光市立日光東小学校(1986年)
サイズ:H3500×W1200×D800mm
素 材:陶
技 法:陶板による積み重ね、軸は鉄パイプ
陶壁は、壁画の延長線上に存在しますが、空間芸術の1つである以上、時として、立体作品ーモニュメントに繋がっていく場合があります。
最初に頼まれたのが、1986年の日光東中学校です。普通の彫刻作品は、どのような場所に置かれるかを考慮しなくても成立しますが、モニュメントはそれがどのような場所に置かれるかが、制作上の1つの条件になります。
従って、彫刻作品のように、単体として完結する形は求めません。空間への広がりが大切ですので、「上昇」「増殖」というような、形体の連続性を重視するようになりました。
日光東中学校のモニュメントは、子供達が未来への夢を持てるよう、上に向かって延びる「上昇」する形態にして、大地から空へと階段を駆け登るイメージで創作しました。2つの階段が離れたり、接続したりしているのは、紆余曲折を繰り返しながらも、互いに助け合うことの大切さを表したかったからです。下から3分の2のところで、左右が繋がっていますが、これは構造的な配慮も兼ねています。(H型構造)
「ドキドキ」 第53回新制作展(1989年)
サイズ:H700×W350×D350mm 5体組み(作品1個のサイズ)
素 材:陶
技 法:陶板の貼り合わせ、陶彫
陶壁でも言えることですが、特にモニュメントは、与えられた場所の特性を考慮し、その場に関する記念し、賞賛する概念を象徴しなければならないという制約があります。それゆえ、与えられた空間に対しては、常に受身にならざるを得ません。しかも作品が完成するまでに、大勢の人達がかかわることになりますので、それだけストレスも強くかかります。受身でなく、より自由に積極的にオブジェを創り、逆にモニュメント制作の刺激にしたいと思うようになりました。(対極の仕事、陶彫邪鬼もこの頃からです。)そうして、オブジェ創りが始まったのですが、モニュメントへのオマージュとして、どうしても考えてしまいますので、やはり、空間への広がりは意識せざるを得ません。移動可能で、しかも陶の技術的制約を考えると、縦方向でなく、横方向の複数体による連続性が有効です。そこから「形のグラデーション」が生まれました。
元会員の人から、新制作展には、スペースデザインという部門があり、是非にと薦められ、出品したのがこの作品です。私の場合は、これまでは団体展とは縁のない仕事でしたので、初めは躊躇しましたが、毎年、東京のど真中に自由に発表できる場を持てるのは、競い合えるという意味からも、良い刺激になると思い決心しました。
かつて日本画を描いていた時以来の団体展でしたので、はたして受け入れてもらえるのか、それこそ「ドキドキ」でしたが、幸い初出品、初入選して、ホッとしたことを今でもよく覚えています。
「断々」 第56回新制作展(1992年)
サイズ:H900×W250×D250mm 5本組(作品1個のサイズ)
素 材:陶
技 法:陶板の貼り合わせ、陶彫
初めて新作家賞を頂いた作品です。やはり、「形のグラデーション」シリーズです。翌年、93年にも新作家賞を連続していただき、そして94年、会員に推挙されました。この間、すべてこの「形のグラデーション」シリーズでした。ですから、私にとって、このシリーズは当時の創作上の基本ポリシーになった記念すべき作品群といえましょう。
Vol.27 福井 一真(Fukui kazuma)
福井 一真 プロフィール
1979年 京都市生まれ (現在愛媛県松山市在住)
2001年 第65回新制作展スペースデザイン部門 初出品初入選(以降、毎年出品)
2006年 音の彫刻コンクール2006 準奨励賞受賞
2008年 第72回新制作展スペースデザイン部門 新作家賞受賞
2009年 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(上越教育大学配属) 修了
2010年 愛媛大学教育学部美術教育講座(美術科教育) 着任(現在に至る)
2010年 第74回新制作展スペースデザイン部門 会員推挙
2018年 cubework福井一真展(個展:愛媛県美術館)
2019年 カタチカラ2019(グループ展:愛媛県美術館)
「楔」
素材:紅松
サイズ:W×D×H=200×100×170(cm)
これは新作家賞を受賞した最初で最後の作品です。
この作品まで挽き曲げ(木にスリットを入れて曲げる技法)を使ってあれやこれやと色々と悪戦苦闘をしてきたのですが、一度原点に帰ろうと思ってシンプルに仕上げた作品です。
作品の形状についても配慮し、自分なりに丁寧につくっていたことが思い返されます。
この頃から、ただ曲げるということだけでなく、丁寧な加工とスリムな形状を意識し始めたような気もします。
「格子T01」
素材:紅松
サイズ:W×D×H=200×200×60(cm)
この作品は、挽き曲げを利用して「球面」の生成を試みたものです。
格子状にすることによってスリットが縦軸と横軸の双方から構成されるようになるため、縦への曲面と横への曲面を同時に生み出して「球面」ができないか、と考えたものです。
球面としてみると球面にみえなくもない。。。
試みとしては一定の成果を得たのではないかと思いました。
そして、この作品で会員推挙となりました。
「cubework-まる-」
素材:米松
サイズ:W×D×H=60×60×130
挽き曲げから格子状の作品へ移行した後、その格子を立体に組んでいくということに発想がいきつきます。「四方十字組手」という技法を多用して格子を立体にするという試みが、現在も続くcubeworkシリーズの始まりです。
これはこのシリーズの2作目となります。
この作品で、外側のフォルムだけでなく、木材が複雑に交錯する内側の面白さにも気付けました。また、1本が折れてもお互いに形を支え合うようになっているため作品として形状を維持できるような重層構造となっています。
2022年1月現在は、このシリーズも10作目となりましたが、もう少しこのシリーズの可能性を感じているところがあるので継続していこうと考えています。
「カタチカラ2019」(グループ展)
2019年に愛媛県美術館にて愛媛県に縁のある新制作展出品経験者(絵画・彫刻・スペースデザイン)でグループ展を開催。スペースデザイン部からは福井の他に佐伯和子氏と前田亮二氏が出品。
「カタチカラ2019」(グループ展)
2019年に愛媛県美術館にて愛媛県に縁のある新制作展出品経験者(絵画・彫刻・スペースデザイン)でグループ展を開催。スペースデザイン部からは福井の他に佐伯和子氏と前田亮二氏が出品。
Vol.26 野口 真理(Noguchi mari)
野口 真理 プロフィール
1957年北海道旭川市生まれ
1977年女子美術短期大学造形科卒
日産自動車株式会社造形部、東洋ガラス株式会社企画課でデザインの仕事に従事。
1997年学士取得。
2002年~ 新制作展(2007年、2016年 新作家賞)
2004年、2005年 上野の森美術館大賞展出品(上野の森美術館)
2007年 新春公開映画「幸福な食卓」(松竹・原作瀬尾まいこ)作品協力
2005年~ CAFネビュラ展(埼玉県立近代美術館)
2005~2018年 チェリモヤ展(練馬区立美術館)
2007年~2011年 日本建築美術工芸協会主催「卯月展」(建築会館)
2009年 飯田橋ラムラエントランスホール「写心と陶」展
2011年 国際陶芸教育交流展(東京芸術大学大学美術館陳列館)
病院とアート展(さいたま市民医療センター内)
2011年~2017年小島孝子と女子美術大学同窓会展
【2015「どうぶつ日和」、2016「青・あお・蒼」2017「生きる」】
(北アルプス展望美術館企画/安曇野)
2011年~2021年four exhibition天王洲セントラルタワーアートホール展(東京都)
2015年~2019年 日本建築美術工芸協会主催「街なかミュゼ」出展(船橋市他)
2016年芸術在線 国際女流画家協会世界巡回展東京(東京中国文化センター)/北京2016年~ 日本建築美術工芸協会主催「BOX展」(建築会館)
2017年 新制作 北海道ゆかりの作家たち展(本郷新記念札幌彫刻美術館)
[個展] 書肆啓祐堂(高輪) ギャルリーカンディード、画廊るたん(銀座) Bギャラリー(西池袋) 三番町ギャラリー(川越) エルポエタ、風画(さいたま市) 住まいの間~夏のしつらいat 可喜庵(主催:鈴木工務店 企画:MINFAPLAN)2008年OAG主催ドイツ文化会館ロビー展(OAGハウス東京)
2010年(伝統手摺木版高橋工房企画)高橋工房ギャラリー蒼 他個展、グループ展等で活動
収蔵 さいたま市民医療センター他現在埼玉県立の芸術系高校で美術科非常勤講師、さいたま市のコミュニティー施設で陶芸指導。
(プロフィール画像の椅子オブジェ・撮影:金原 京子 氏)
「曲」
第71回新制作展(2007年)
w55cm h50~65cm d25cm(平均サイズ/1個)
素材: 陶土、釉薬、粉漆、金属箔、カシュー
技法: ひも作り
新制作展に都美術館で開催されていたころから出品していて国立新美術館へ移動した年に新作家賞をいただいた作品です。その頃はいろいろな展示の場が人のご縁で広がっていました。個展をかけさせていただく中で出会った表現者のおひとりで、著作に感銘をうけステートメントを作りました。一部掲載します。音楽から建造物まで織り込まれた本を複数出版されていたことを思い出します。出身地の新聞社である北海道新聞の文芸欄「秋の公募展を見て」で以下のコメントををいただいたことも強い印象です。武田 厚氏(美術評論家)「ユニークな作品であった。素材や技法、あるいは空間認識までもが複合伴用されていて興味深い。」私がふわっと考えていた想念が他の方へも伝わった気がしました。
曲「曲る」ということに心惹かれます。
「生活空間」家の構造はさまざまの用により分別され、それぞれが求める空間を「曲り屋」という表現で適切に対応されています。用に応じて閉ざされたり開かれたりする空間は、時に応じて臨機応変に対応します。曲りの場は、人それぞれの心理に対応し、融合するものであるのかもしれません。曲り屋の存在が場に生き場を作るのは人だけではありません。人に限らず、植物、動物、さらに自然に存在する土、石、水、それらの集合として現われる山、川、池、岩壁、など等自然のめぐみによって生かされ共にあるということを思いだされる気がします。どこかエッセンスを造形することができればと考えています。
また個人的空間に限らず、町並の現れ方、道路のあり方、木の枝の育ち方、川の流れの紆余曲折、まるで変形を楽しんでいるかの如くです。
自然の美意識です。美意識とはそれら現れた形にさそわれて、芽生えると考えます。変形は造形の原点ではないでしょうか。
陶素材による「曲り屋」の提案です。(参考文献:「曲ることから生れる新空間」大野忠男)
Concept ‘Being bent’I am attracted by ‘being bent’. A house, a space for living, is divided into spaces by use, and each space is appropriately named ‘a bent space’. A space, which is flexible to close or open by the usage, acts according to circumstances. A bent space might deal with mentality of each human being to blend. It is not human being only that gives life to a bent space. It reminds me that we are given life by nature’s bless and live with it, which comes from plants, animals, soil, stone, water and mountains, rivers, ponds, rocky walls as the collective entity. I wish I could give a form to its essence. Moreover, it seems that it is not only a personal space that enjoys the deformation, but so do the way a town is formed, the way a road is paved, the way a twig is grown on a tree, and twists and turns of the river flow. It is nature’s sense of beauty. I think that a sense of beauty is born and guided by the form where it is found. Deformation is the original form of creation, isn’t it? This is the proposal of a bent space by clay. (Reference: ‘A new space born by being bent’ by Tadao Ohno)
「まるくひそむもの」
第79回新制作展(2015年)
w40~55cm h40~60cm d20~55cm
素材:陶土、釉薬、粉漆、金属箔、カシュー
技法:ひも作り
紐作りで本体にあたかも穴が開いた様に見える造形が、制作していて楽しく幾つも制作していた年でした。イメージは空間そのものが醸し出す気配を形ににするのが夢でひっそり片隅に佇む見えないものを見たくてという気持ちです。
「つちのレン」
第83回新制作展(2019年)
w200cm h40cm d300cm
素材:陶土、釉薬、粉漆、金属箔、ステンレスボール、カシュ―
技法:ひも作り、たたら作り
植物は土から水分をとり、肥沃な土壌からうまれ、育ちます。陶土は焼成することで形となり残ります。植物をイメージして造形しました。鑑賞者へ作品に触れて座っていただき蓮の水面を想像していただく提案をしました。参加型で鑑賞者がおられて成り立つ作品です。
Vol.25 中島 直美(Nakashima naomi)
中島 直美 プロフィール
1956山形県生まれ
1990 新制作展初入選、以後毎年 現在に至る。
1996・1998 新作家賞受賞・1999 新制作展 会員推挙
-主な展覧会-
1990-2021 新制作展(東京都美術館・新国立美術館)
1991・93・97・99 デザインフォーラム銀座(銀座松屋)
1994・2004・2005・2017 所蔵作品展(東京国立近代美術館工芸館)
1994・95・96・97・98・99 Taegu Textile Exhibition ’98 グランプリ受賞(韓国)
1999-2000 日本の工芸今100選展 (パリ三越エトワール・日本三越巡回)
1998・2003 ミュルーズ染織美術館-PAPOLES DE LA NATURE ’98 ’03 個展 (France)
2004・2008・2018 ミュルーズ染織美術館 常設・所蔵作品展 (France)
2005-2012 テキスタイルの未来形(大阪・金沢・札幌・福岡・沖縄・東京・網走)
2005・2006 miniartextile Como -Como・Sardegna・Venezia・Montrouge-( Italy・France)
2007 Japanese Suppleness ”Contemporary art from Japan “ A Galleriet (Denmark)
2021 テキスタイルの未来形in宝塚 (神戸)
2021 国立工芸館 所蔵作品展 (金沢)
-国内外個展・グループ展・企画展・招待 他多数-
-Collection-
東京国立近代美術館工芸館・大邱文化芸術会館(韓国)・ミュルーズ染織美術館(France)・Arte & Arte(Italy)
技法:シルクスクリーン手捺染
作品コンセプト
テーマは-Nature’s Talk series-モチーフは動物。平面である真っ白な布の上に制限された空間の中で、上下左右バランスの良い飽きのこない緊張感あふれる、くり返すパターン展開を構成。新制作展では壁作品を発表しています。広い空間で作品を発表できることを嬉しく思っております。布は切ったり、縫ったり、包んだりと自由自在。布以外の素材ではガラス、木、紙と色々な異素材にプリントしインスタレーションなどを展開し発表しています。
自作のホームページですが観ていただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
1998年 新制作展新作家賞受賞作品
-Nature’s Talk series 1998 -coti-
技法:シルクスクリーンプリント手捺染
素材;綿布(オックスフォード)
サイズ:460cm(H)x230cm(W)
黒一色で、点・線・面の表現技法と、平面の布に空間を構築し動的効果を試みた作品。
2015年 -Nature’s Talk 2015- series Le coq -
技法:シルクスクリーンプリント手捺染
素材:綿布(オックスフォード)シルクオーガンジー(絹)
サイズ:460cm(H) x 340cm(W)
スリランカの街の中を歩いていたら、にわとりが食べ物を漁っている不思議な光景に出会った。にわとりのプリントとドイツ語のクロスワードパズルのパターンプリントを二層にすることで、にわとりが見えたり見えなかったりと静かな錯視と動的効果を表現した作品。
2017年 -Nature’s Talk 2017 - series kaeru -
技法:シルクスクリーンプリント手捺染
素材:綿布(オックスフォード)
サイズ:460cm(H) x 340cm(W)
背景のグランドはデジタルイメージで表現。モチーフは日本一美しいと言われる“いしかわがえる” を宙に舞うように大きなアングルで展開、動的効果を表現した作品。
作品の前を横切った人がふと、振り返ってみてくれるような作品を創れるように、がんばっていきたいと思います。デジタル化が当たり前の昨今ですが、アナログにこだわり、手仕事の大切さを感じながら、シンプルで楽しいデザインを創り続けたいと思います。くり返すパターンは、日々の生活と同じで人生そのもののように思います。作品を創れるしあわせを忘れずに前に進みたいと思います。
Vol.24 野口 育郎(Noguchi Ikuro)
野口 育郎 プロフィール
1959 東京都生まれ
1981 日本大学生産工学部建築工学科卒業
小野襄造形研究室に所属 新制作展初出品
1988 新制作展 新作家賞受賞(同’89年受賞)
2000 新制作協会 会員推挙 他、グループ展等を開催
1982年 流
私は 1982年 大学を卒業した年に初めて新制作展に出品しました。第46回展です。
その年大学を卒業後同校でスペースデザイン部の会員で教授をなさっておられた小野 襄氏の研究室に研究生として所属させて頂くことになりました。 但し毎年の新制作展への出品が条件でした。
大学で専攻していたのは建築です。それも工学部系でしたので造形やものづくりに関する知識も技術もありませんでした。
大学4年の夏休みに同大学に講師としていらした日高 單也氏と小野 襄氏の作品制作を手伝わさせて頂いたことがものづくりへ足を踏み入れるきっかけになりました。その時造形素材としての合成樹脂を初めて扱いました。
合成樹脂、いわゆるプラスチックは様々な製品として私たちの身の回りに溢れています。
従来より射出成型の製品や型材としての樹脂素材はあったそうですが、小野 襄氏が造形材料としての樹脂を初めて考案されたとのことでした。
特殊な設備や機材を用いず日頃作品制作を行っている工房で、まして常温での制作が可能ということに驚きました。
この作品は樹脂の積層法で製作しました。樹脂を積層しガラス繊維で補強して形を作り維持します。
研究室の先輩の方々にアドバイスをもらい助けて頂きながら初めて制作した1:1の造形作品です。
1993年 街
これまでの作品は平面構成作品の一部を立体として捉え形にしていました。
この作品は実験的と言えば聞こえはよいのですが少々はちゃめちゃな感じです。
発泡材の大きな塊の上に熱した金属片を置きます。当然金属片は発泡材を溶かしながら沈んで行き重力により下へ下へと不規則な軌跡を取りながら落ちて行きます。その金属片が動いた通り道を形にしました。
地中の蟻の巣を見える形にしたようなものです。
工法を含め制作にはデザインを試みましたが形自体のデザイン性は乏しいものでした。
ただこの作品以降何か縛られていたものから少し自由になったような気がします。
2010年 白い舎
この作品の数年前から作品の中に家具的な要素を組み入れたらと思い制作していました。
展覧会出品後の作品は実際に今でも自宅でテーブルとして使っています。
平面構成を基に立体作品を制作することは従来から行って来た事ですがこの作品は型を形としました。
少々分かり辛いでしょうか。
先ず雄型となる原型を作りそれを基に雌型を作ります。作品はその雌型です。形状の予測は多少付きますが型を外すと予期せぬ形が見えてきます。ちょっと癖になる面白さがありました。
プラスチックと言えば多くの方々が有害な化学物質やチープなものといった印象をお持だと いうことは否めません。しかし造形素材としての一面も知って頂ければと思います。
Vol.23 西村 俊夫(Nishimura Toshio)
西村 俊夫 プロフィール
1950 宮城県生まれ
1977 東京教育大学大学院教育学研究科修士課程修了
1983 新制作展 新作家賞受賞
1988 新制作展 新作家賞受賞
1996 新制作協会 会員推挙
2003 越後妻有アートトリエンナーレ2003(共同制作)
2007 空間の彩展(画廊るたん)
2008 第2回空間の彩展(画廊るたん)
2012 新制作協会スペースデザイン部有志山形展(山形市:文翔館)
作品名:SCENE 88A
出展:第52回新制作展(1988年)
サイズ:w850 × d850 × h1100
材質:シナ合板,エゾ松,アルミ丸棒,
二回目の新作家賞をいただいた作品です。机の上にアルミニウムの円柱が並んでいます。直径60mmのアルミの丸棒を旋盤で加工したものです。旋盤は大学の工房にあったものをお借りしました。やや小型のだいぶ古いものです。トースカンとプラスチックハンマーで中心を出してからチャックで固定し,バイトで少しずつ削るという作業の繰り返しです。夏休みの工房で扇風機を回しながらシュルシュルとアルミを削る感覚が楽しくて夢中で作業したことを覚えています。
作品名:SQUARE−CIRCLE 99
出展:第63回新制作展(1999年)
サイズ:w2640× d1320 × h1240
材質:杉,ピーラー
厚さ3ミリに製材した杉板をはぎ合わせて1枚の大きな正方形を作りました。この正方形を一定間隔で重ねてかたちが作られています。これまであまり使用することがなかった杉の板材を使いました。杉の木目,特に板目の木目が気に入りました。正方形の内側は直径の異なる円形で抜いています。離れて横から見ると半球が見えるようになります。
作品名:杉の列−012
出展:第76回新制作展(2012年)
サイズ:w1060 × d1060 × h500
材質:杉,シナ合板
杉の角材を256本並べた作品です。角材の上部と下部は,太さを角材ごと変えてあります。上部には,円形のくぼみができるような加工を施しました。内部は、太さを変化させた角材を並べることによってドーム状の形が形成されるように配置しました。くぼみのある矩形の全体像とうっすらと見えるドーム状の形状、これらによって多層の空間を持つ立体となるようにしようと思いました。実際に座ることが可能なものとして制作しました。
Vol.22 二井 進(Nii Susumu)
二井 進 プロフィール
1955年 広島生まれ
新制作協会 会員
新制作には1980年から出品
1981年,1987年,1990年、新作家賞受賞
1993年 会員推挙
他、個展、グループ展を開催
1981 集落
この集落という作品は2年目の発表作品です。
大学ではシルクスクリーンなどの平面表現を主として活動していました。
空間表現の中で版表現であるシルクスクリーン技法を活かした造形表現はどうすれば良いか模索していたところです。
作品面と摺りガラスに印刷することで下の画像とのズレを表現した作品です。
台となる板に印刷を加えることで場の空間性を表現できればと以後の作品に活かしてきています。
1997 陽炎
この作品は形と型の関係による作品です。
樹脂を使用した作品制作を行っていますから、作品を作る場合に原型を作り、型取りをして作品を制作していきます。この工程を通して生まれた作品になります。まず、1997年の作品を制作する段階で生まれた型取りの型の形を作品として表現したものが1999年の影法師の作品になります。
形→型、型→形、表現の方法論としてその関係性は造形を考える上で面白く興味のあるものとなっています。
1999 影法師
この作品は形と型の関係による作品です。
樹脂を使用した作品制作を行っていますから、作品を作る場合に原型を作り、型取りをして作品を制作していきます。この工程を通して生まれた作品になります。まず、1997年の作品を制作する段階で生まれた型取りの型の形を作品として表現したものが1999年の影法師の作品になります。
形→型、型→形、表現の方法論としてその関係性は造形を考える上で面白く興味のあるものとなっています。
2015 回帰
この作品から無彩色(白色)を主として表現しています。
場(台)はステンレス板で天井の照明が映っています。
色を無彩色にすることで光と影の移り変わりや移動していくことで、影の濃淡で空間性(立体感)を捉えることが出来ると思います。強い影、淡い影、緩やかに変化していく影、光が何処からあたるかによってモノトーンの変化の面白さを感じています。
Vol.21 中曽根 清子(Nakasone Kiyoko)
中曽根 清子プロフィール
1963 女子美術大学短期大学部造形美術科卒
1995~1998 グループ展 松崎画廊(銀座)
2008~2021 女子美術大学香川支部展(隔年 高松市立美術館)
2013 個展 灸まん美術館(香川)
2014 新制作展新作家賞
2015 新制作展新作家賞
2016 新制作協会会員
『空の道』 第79回 新制作展(2015年) W1120×H3500
この作品は新作家賞をいただきました「潮音」の後、渦巻きをモチーフに制作した作品の中のひとつです。バティックの色使いにこだわって制作いたしました。茶、紺、その重ねの黒、白残しの白の4色染です。
チャンチンだけの描き方で、その特長生かした作品創りをしてゆきたいと思っております。
Vol.20 田中 遵(Tanaka Mamoru)
田中 遵 プロフィール
1964 東京都杉並区生まれ、神奈川県藤沢市育ち
1992 Savannah College of Art and Design (U.S.A.)、Master of Fine Art (Interior Design)修了
1995 新制作展 新作家賞受賞(同1997・1998年受賞)
2001 新制作協会 会員推挙
2008 神戸芸術工科大学「博士(芸術工学)」修了
2009 空間の彩展(画廊るたん)
2014 この年より毎年ペイントブランドBenjamin Moore & Co.のフラッグシップショップ南青山店においてウィンドウディスプレイを担当、学生達と作品を共同制作・設置
2015 公募団体ベストセレクション美術2015
2016 International Contemporary Furniture Fair (ICFF)2016 (ニューヨーク)、学生達とグループ作品出展
2021 日光東照宮 境内建築物八棟国宝指定七十周年記念 日光東照宮美術展覧会
<芸術神来楽展> 招待出展
若い人達に新制作展を知ってもらうために自分のホームページに新制作展のバナー(ホームページアドレス)を貼らせていただきました。
もし、よろしければ皆さんの個人もしくは会社のホームページのURLも教えてください。
作品名:Maturity
出展:第59回新制作展(1995年)
サイズ:w1500 × d1800 × h1800
材質:スプルス材・鉄
最初に新作家賞をいただいた作品になります。懐かしい東京都美術館での展示です。まだ実家の玄関あがった目の前に飾ってありますが、そろそろ処理しなければなりません。作品を作るにあたり、諸先輩方と素材や技法が同じにならないようにオリジナルな作品制作を考えていた折りに友人の鉄骨業を営んでいる家に泊まり込み職人さん達に金属溶接を教えてもらい溶接の資格まで取りました。柔らかい木材と硬い金属の扱い方は全く違うのですが、何とか融合できないかと考えた末に作り上げた作品になります。金属の良いところは、制作に失敗して欠けたりしても溶接すれば綺麗に溶けて一体化してくれます。しかし、木材だと失敗して後から付け足した場所は隠しきれません。いつまでも、今でも、何か新しいことが出来ないか考えて作品制作に挑んでいます。
作品名:It’s True of the Twelve
出展:第79回新制作展(2015年)
サイズ:w1700 × d1200 × h1200
材質:カリン材・エポキシ樹脂・鉄
同じことを続けるのが苦手な私は違う素材と違う技法をいつも探しています。あるとき、木材を削っていて、ふとその上に置いた虫眼鏡から見た削り出し箇所の木目が大きく浮き出していて綺麗だと感じたのです。そこで、木材を川の流れのように掘り、そこに薄く着色した樹脂を流し込みました。思った通り綺麗な木目の川ができました。しかし、写真ではよくわかりませんが、樹脂が固まる際に木材から気泡が出て木目が上手く見えない箇所もあります。また、木材は部位によって柔らかさが違うので、柔らかい部位では樹脂がしみ込んでシミになります。新たな制作実験をすればするほど新たな発見があり、おもしろいものです。次にどんな新しいことをするかプレッシャーを抱えながら考えています。
作品名:ぶんしんのじゅつ!! ー 2
出展:2016 ICFF(INTERNATIONAL CONTEMPORARY FURNITURE FAIR) at JACOB JAVITS CONVENTION CENTER, New York U.S.A.
サイズ:w2800 × d1400 × h1900
材質:透明塩ビパイプ、スタイロフォーム、アクリル板
学生達とワイワイと作品を作ることが好きで、新制作展への作品以外は見る人が触れたり遊べたり楽しめる参加型作品を作ることが多いです。この作品はTOKYO DESIGN WEEK 2015(於 明治神宮外苑絵画館前)にて学校作品部門でセミグランプリを受賞し、またプレゼンテーション部門でも2位を獲得したデザイン作品「ぶんしんのじゅつ!!」をアメリカ・ニューヨーク JACOB JAVITS CONVENTION CENTERで開催されたICFF(INTERNATIONAL CONTEMPORARY FURNITURE FAIR)へ出展した作品になります。東京での元の作品は、約45人で制作しましたがニューヨークへは19人の代表者で参加しています。また、作品のデザインはアメリカでの展示用に新たに「ぶんしんのじゅつ!! ー 2」として制作し直しています。これは、運搬経費を安くするために自分たちで飛行機で運べるように重量のあるモルタルで作っていた土台をスタイロフォームで作り直し、重さの無いスタイロフォームでも倒立するようにデザインの一部を円形に変更してトランク4つに納めて運んでいます。それでも長さが2m近くもある透明のパイプを50本近く運ぶためにサーフィンのロングボード用のケースを4つ使用して運んだので、ニューヨークの街中を会場までサーフボードケースを持ち歩いている光景は不思議で歩いている人々が振り返っていました。設置会場では、持っていったバケツ4つに水を汲んできてパイプに水を入れて模様を作っています。大変でしたが良い思い出です。
Vol.19 十川眞紀(Sogawa Maki)
十川眞紀 プロフィール
1955 山形県酒田市生まれ
1978 東京家政大学服飾美術学部美術専攻学科
1979 文化学院アートアンドクラフトセンター終了
1979 新制作展スペースデザイン部初入選
1982 新制作展新作家賞受賞
1984 新制作展新作家賞受賞
1985 ファイバーワーク ミニアチュール展
1986 新制作展スペースデザイン部会員
1986 ZI現代作家タペストリー展
1988 新制作協会 会員推挙
1988 ファイバーワーク100人展
以後、個展、グループ展など。
2009 山形エクセレントデザイン賞受賞
Vol.18 谷浩二(Tani Koji)
谷 浩二 プロフィール
1952 大阪府生まれ
1977 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン科卒業
第41回新制作協会展 新作家賞(’78 第42回展同受賞)
1978 第12回日本国際美術展
第1回エンバ賞美術展(’80 第2回展)
1979 第14回現代日本美術展
1980 第44回新制作協会展 会員推挙
1982 あかりを考える4人展
1984 第1回SD展(’85 第2回展、’86 第3回展)
1987 光・時・スペース展(藤本經子氏、小野かおる氏との三人展)
1988 第2回ギャラリーウィンドウ展
1993 第1回HUMAN NETWORK展(’94 第2回展)
1996 「場」展(山下勘太郎氏、他)
アートの中のあかり展
1997 現代美術空間 ART LIVE ’97
1999 第17回む展
2001 「光と織」(佐伯和子氏との二人展)
2002 「3人の触覚」(岩間弘氏、佐伯和子氏との三人展)
2003 あかりメッセージ2002、同2003(’04 同2004, ’05 同2005, ’08 同10周年記念展)
2006 「時と遊ぶ」(小野行雄氏、金子稜威雄氏との三人展)
2008 空間の彩展
2012 新制作協会スペースデザイン部有志山形展
公募団体ベストセレクション美術2012
2021 ちょっと小さなスペースデザイン展
谷照明設計事務所主宰
照明士(SLC1191)
武蔵野美術大学特別講師
照明学会専門会員
新制作協会会員
日本おもちゃ病院協会会員
作品1 第41回新制作協会展受賞作家展の作品(1978年)
題 名:LIGHTING PASSAGE
素 材:アクリルミラー、ハーフミラー、アルミニウム、スリムライン蛍光ランプ
大きさ:W1200×D1100×H137
受賞作家展か・・・、しばらくして気持ちが落ち着くと少しずつ構想も浮かんできました。しかし、工房はないし東池袋のアパートでは作れない。できるのは図面を渡してパーツを作ってもらうことくらい。これしかない。そこで、電車で取りに行ける日暮里界隈で土曜日も稼働している町工場を電話帳で探し、図面を持って回ったのです。2ヶ月目でやっと見つけた板金屋さんが、その後何年もお世話になる社長の工場でした。「ロットは?」「いえ・・、1組だけです」と他で何回も交わしたお決まりの問答にも、「・・・そうか」とだけ。そしておもむろに端材の中からアルミの厚板を引っ張り出し、曲げとTIG溶接の極意を見せられました。唖然としながらも感動。その場で図面を修正しては見せ、何回目かで「預かるわ」と言われたときには全身の力が抜けました。パーツ受け取りの日、「あの時のあんたはなんか切羽詰まってて断り切れんかった」と。この言葉は今でも頭に残っています。スズヒロの社長は技能士としても人情家としてもピカイチでした。その他にもスリムラインの大亜蛍光工業さん、アクリルの冨士特殊硝子さんも無理を承知で若僧に協力してくれました。それに勤務先の理解も本当に有難かったです。
お蔭さまで何とか無事に<作品1>を受賞作家展に出品できた訳ですが、この作品が私を創ってくれたのではなく、この作品作りを担ってくれた人たちが私を創ってくれたのです。とは言えこの作品からも、作る場所も時間もお金もない平社員が創作活動を続けていく作法と楽しみ方を教わりました。この作品で私の人生が変わったと言っても過言ではありません。
<作品2> 第64回新制作展の作品(2000年)
題 名:luminous bend
素 材:手漉き和紙(楮)、真鍮棒、ムギ球、鋼板、自動調光器
大きさ:W3150×D600×H720
形や素材に拘りはないものの、私が大学のときから持ち続けているのは《光の持つ表現力を生かす》ことです。そして45回展の頃からは《光源を直接見せない》ことも制作条件に加えました。ぼんやりと静かに光っている状況やその時間の流れに惹かれていて、高い輝度は敬遠しがちだったのです。
<作品2>では米粒大の白熱電球(ムギ球)60灯を楮の和紙に直接漉き込んだセードを6枚作りました。これは外注できないので、鹿児島にいる友人のアトリエで漉かせてもらいました。上中下の列で3回路とし、自動調光器で時間差をつけてのフェードイン、フェードアウト。周期は約30秒。風を受けると6枚それぞれが揺れて光が曲がり、明暗の変化と共に波が動きます。消えるとムギ球も見えず、ごわごわしたただの紙です。都美館の明るい中で、微動だにせず1分(2周期)近く見ていた人に、結局話し掛けることができず悔やんだことを覚えています。
どんな光源でも長く付き合っていると、時には無理難題を具現化したくなりますが、この作品はそのために最も長い時間考えさせられました。想定した形になったときは、試練をのり越えた気分でした。また、この作品は照明器具ではないにしろ、交流電源を使う工作物として展示するためには、内線規程や電取法(当時)に抵触しない仕様が求められるので、配線や絶縁方法などでいろいろと苦労を強いられた思い出深い作品でもあります。
<作品3> 第78回新制作展の作品(2014年)
題 名:カゲさんのお蔭2014
素 材:アクリル、ABS樹脂、パワーLED、シンクロナスモーター、MDFボード
大きさ:W590×D590×H820
スペースデザイン部門は応募規定に「空間に関するあらゆるデザイン作品」と謳われており、実験的作品も許容する懐の深さを持っています。私はここに魅力を感じて43年間休まず出品してきました。ミラー効果、モアレ、錯視、残像、陰、影、色、時間、空間、など視覚に作用する特徴的な現象や属性を立体造形に反映させてきたのですが、私の制作はどれも試行錯誤の過程に過ぎないものばかりです。これが陳列できる太っ腹な新制作に感謝です。
<作品3>も試作的に制作したもので、「影の薄いカゲたちに脚光を浴びせて主役に抜擢しよう」とした実験デザインです。そのため派手な色を使うようになりましたが、進化したLEDの加法混色で無数の光色が得られるようになると、今度は拠り所や決め手が希薄になり、答のない世界に迷い込んでしまいます。だけどこれはこれでその都度新しい発見もあり、面白くて飽きないため、ついつい何年も続けてきました。
そして観察に没頭するあまり、直視してはいけないパワーLEDを数秒単位でも回数が増えて結果的には長時間見てしまっているのです。いつの間にか視力は衰え、眩しさにも弱くなり、色名の付く目の疾患が、頼んでもいないのにじんわりと寄り添ってきます。しかし、こんな私を創ってくれた作品を作ったのも私ですから、これは正に自業自得というか因果応報。かと言って今更ヒカリモンとの付き合いは止められず、ならば、素朴な白熱発光に戻るか、しばらく真面目に眼を休めるか、大団円を考えるか、等々、今は選択肢を探しているところです。私にとって44回目となる今年度は苦渋の決断で初の不出品ですが、次の新制作展にはまた出せればいいなと思っています。
Vol.17 立花克樹(Tachibana Katsuki)
立花 克樹 プロフィール
1979年 宮崎市生まれ、現在宮崎市在住
2002年 渡欧、ヘルシンキ環境造形展覧会
2006年 宮崎県展 特選
2007年 個展
2008年 新制作展 新作家賞
2009年 新制作展 新作家賞
2011年 会員推挙
2012年 ボリビア国際彫刻展
題名:「きのとんねる」
素材:クス
サイズ:120cm×240cm×180cm
大学の恩師は、私に「大きな木を彫ったら?」と、アドバイスしてくださいました。
最初は30cm程度の角材。それが直径50cmの丸太へ。次第に直径1mを越え、長さも3mほどに。チェーンブロックもない広場で、仲間とテコで大木を動かし、朝から晩までひたすらチェーンソーを振り回していました。「私を変えてくれた作品」一つ目は、「木のトンネルシリーズ」です。
木材加工は、基本的に木口から切削することはないのですが、このシリーズはすべて木口に刃を入れます。彫り進めたら、体ごと丸太の内部に侵入。ヘッドライトを付けることもありました。まさにトンネル工事。体中にクスの樹液を浴びるので、私自身もクスの香りをまとう男に仕上がっていました。
作品は佐賀市、大川市、宮崎市などに遊具として設置されています。
題名:「life on the ground」
素材:クス
サイズ:90cm×200cm×90cm
二つ目は、2008年に初めて新作家賞をいただいた作品です。
それまで丸太という「円筒のフォルム」に固執していましたが、「円筒でない木材」に着目することになりました。家具製造で有名な福岡県の大川市。クス専門の市場によく足を運びました。市場には、枝が多すぎたり、規格に少し足りなかったりするなど、家具材に向かない丸太もあります。その多くは、どんなに見事な大木でも細かく裁断され、チップ合板の材料となるのです。枝が多く、カットされた大木の一部が転がっていました。円筒ではなくなったそのフォルムを生かし、新しい挑戦が始まりました。九州から立体作品を運搬することは、とてもたいへんなことです。毎回、お金と時間をかけ、搬入を迎えていました。このときは、自宅アトリエに鉄道コンテナを呼び、運搬しました。搬入口でコンテナの扉が開いたとき、生乾きで4日間西日本を旅してきた作品は、蒸されていい感じに乾燥していました。
題名:「life 2012」
素材:アルガロボ
サイズ:80cm×240cm×80cm
最後は、2012年にボリビアの国際彫刻シンポジウムに参加した時の作品です。
新制作を観に来られたボリビア在住の彫刻家フアンさんのお誘いを受け、10日間現地制作しました。アルガロボという、南米特有のマメ科の大木でした。マメ科の木材はとにかく固いですが、赤黒く、研磨すると美しく仕上がります。鑿と鉋を持ち込んでいたので、刃物で丁寧に仕上げました。日本の繊細な刃物に、他国の彫刻家たちは興味津々でした。
現地アシスタントもついてくれました。英語も通じない環境で、説明し、指示を出すのは大変でしたが、有意義な時間でした。10日間もの間、作品を作り上げることにのみに集中させていただけたことは、この上にない喜びがありました。現地スタッフの方々には、心の底から感謝しています。
Vol.16 杉田文哉(Sugita Fumiya)
杉田 文哉 プロフィール
1980 東京造形大学 ヴィジュアルデザイン学科 卒業
新制作展 初入選
1986 新作家賞 受賞(同`94 年 受賞)
1996 [ ONOJIN 思考- スペースデザインの方法と実験-](グループ展・パルテノン多摩)
1999 新制作協会スペースデザイン部 会員推挙
2002 [ Art Work Art Walk1.2.3.] ( グループ展・銀座 月光荘)
2004 [ NEGA⇔POSI 展](グループ展・新橋 MAKII MASARU FINEARTS)
2010 [ 空間の彩展II ] (グループ展・銀座 画廊るたん)
2016 [ 公募団体ベストセレクション美術2016 ](東京都美術館)
2021 [ ちょっと小さなスペースデザイン展](グループ展・建築会館ギャラリー)
空に手をかざして掌のシルエットに目をやったり、また指の間から見える雲の動きに見入ったりした経験はあるかと思います。
視点を変えることでその空間の印象は変わるものです。
立体の持つ量感を出来る限り取り去り、空間での在り方や関係性を追求した結果、線による表現に行き着きました。線の重なりやその方向性、さらに密度の変化に様々なイメージを重ね合わせる。
動きのある線の構成はその影と同化することで錯視効果が生まれ、魅力的な表情を作り出します。
アルミパイプを使って、線による構成作品をつくり続けています。
今回の企画をいただき、過去の作品を振り返るいい機会になりました。
共通するコンセプトはあるものの、その時々で随分表現が変わってきています。
「 ゆらぎ - 間 - 」
サイズ:H1800×W1800×D1200
材 質:アルミパイプ・エポキシ樹脂
The 67 th Exhibition of SHINSEISAKU 2003 SPEACE DESIGNS
建築中の鉄筋や梁の軸組が好きで、さらにその線で切り取られた空に空間の魅力を感じて、フレームワークによるモデリングを繰り返し行なっていた頃の作品です。
「 ゆらぎ ’12 - focus - 」
サイズ:H2160×W1200×D1200
材 質:アルミパイプ・エポキシ樹脂
The 76 th Exhibition of SHINSEISAKU 2012 SPEACE DESIGNS
量感や質感を出来る限り削ぎ落とし、線の構成によるハーモニーで空間構成を試みた作品です。写真は1/6スケールモデルです。
「 Fluctuation 2017 」
サイズ:H3000×W1500×D300
材 質:アルミパイプ・エポキシ樹脂
The 81 th Exhibition of SHINSEISAKU 2017 SPEACE DESIGNS
線の構成による壁面作品。
目線を限定することで、空間に浮かぶ線の動きや影との関係から生じる錯視効果により様々な表情を作り出します。
Vol.15 白川 隆一(Shirakawa Ryuichi)
白川隆一 プロフィール
1955 | 宮城県仙台市生まれ
| 1979 | 日本大学生産工学部建築工学学科卒業
| 1981 | 新制作展 初出品
| 1982 | 新制作展 新作家賞受賞(同’86’89年受賞)
| 1991 | 新制作協会 会員推挙
| 1996 | 「ONOJIN思考」(パルテノン多摩ギャラリー)
| 2002 | ART WORK・ART WALK展(銀座・月光荘)
| 2004 | NEGA⇔POSI展(新橋・マキイマサルファインアーツ)
| 2008 | 「空間の彩展」(銀座・画廊るたん)
1983年:第47回新制作展 金属粉とエポキシ樹脂によるFRP工法
初めて新制作展に出品したのは、1979年大学を卒業した年でした。
大学で建築を専攻し、その大学の教授でSD部会員であった小野襄氏の研究室に入りましたが、新制作展に作品を毎年出品する事が条件でした。
今まで一度も作品を作った事がありませんでしたので、作品制作を一から学びました。そこで作品を創る意味や抽象表現の在り方、デザインの進め方などと、制作する技法を学びました。
ここが作品制作のスタートで、その事を追求して、今まで作品制作を続けているのだと思います。
以下はその中で素材による違いで3作品を選んでみました。
1983年:第47回新制作展 金属粉とエポキシ樹脂によるFRP工法
創りたい作品が解らずに、読んでいた詩の一節から、海や波が気になったので、休みの日にフェリーに乗り、海を眺めに行った記憶があります。イメージと作品について考えていた時期です。期限に間に合わず、学校に泊まり込んで制作していたと思います。
1986年:第50回新制作展 エポキシ樹脂によるFRP工法
FRP工法とは繊維強化プラスチックの事です。ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材の事です。
前出の作品は、表面が赤茶色の金属粉で、裏打ち材をガラス繊維で補強していますが、本作は表面にガラス繊維を使用しています。ガラス特有の緑ががった色合いが意外な発見でした。
2004年に銀座のギャラリーで行ったグループ展
それまでは学校の工房で制作をしていましたが、学校を辞めた為、工房が使えなくなりました。
設計事務所に所属し、CADを使い図面を描いていた為、図面を描いて外注する事を考えました。ステンレス板をレーザーカットで加工してくれる会社を探しあて、外注しました。
作品パーツとして加工してもらい、自分で組立てて完成させます。
この作品はその第一作目で、思い出深い作品です。
Vol.14 神 芳子(Jin Yoshiko)
神 芳子 プロフィール
東京生まれ
1984年 バスケタリーAMIKUMI主宰/教室開設
1989年~個展、グループ展
新国立美術館、東京芸術劇場、東京都美術館 、つくば美術館
清州国際工芸ビエンナーレ
新制作協会会員
日本建築美術工芸協会会員
日本バスケタリージャパン作家協会会員(審査委員)
著書
「籐の手さげとバッグ」
「籐で編む かごバッグと小もの」
「籐 AMIKUMI」
「バスケタリーAMIKUMI インテリアとバッグ」
「籐 AMIKUMI インテリアとバッグ」
<コンセプト>
素材の籐の特質を活かしてのデザイン生物を感じる造形を追求し、なんか面白いね!親近感を抱けるね!ポジティブになるね!と感じていただける作品作り。そして、エッジを効かせる。
<ターニングポイント>
バスケタリー教室の指導を40年近く続けている中で毎月のカリキュラム作りで沢山のテクニックと立体法則を追求した結果にあるような気がします。
又、新制作展に出品したことから最近の作品が一般の方に評価される様になりました。
今までのバスケタリーの世界から大きく変化してきた感じです。
作品がウィンドウに展示されるまでになっています。
REN Ⅳ (h80 × w30 × d15)
“バスケタリーの造形から見えるもの” その想いから長く続けて参りました。初めの頃はテクニックを重視し法則にこだわった作品作りでした。
その途中で生まれたのがこの作品です。始めから最後まで線が繋がることを考えました。とても気に入っています。
パターン化の一つになりました。
シュモク貝・空 2013年 第76回新制作展(h380 × w190 × d60)
この作品は、新制作展に出品初入選、新作家賞を頂きました。
前年に選外となり、気が重く搬出に行ったところ山下先生と桜井先生がいらして、とても鋭いご指摘と同時にテクニックの美しさを褒めていただきました。「来年も出品してくださいよ」の言葉に来年も出品するぞ!とルンルンで帰ったのを覚えています。
会期中、何度か見学、試行錯誤の結果がこの作品です。
図鑑を見て形が気に入りました。小さなシュモク貝なのですが巨大にしました。立体ではあるのですが壁面に展示したら面白いのではと思いました。
そして、賞を頂いた時はただただびっくり。一心に長く続けているとご褒美を頂けるのだと確信しました。しかし、この作品以上の物が考えられないのが現状です。
シギ 2014年 第77回新制作展(h380 × w270 × d60)
起動 2017年 第81回新制作展 (上段 h85 × w180 × d40)
この作品は作品1の応用です。この時はとても忙しい年になり出品できるのだろうかと思っていました。新作を考える時間が無いと判断。「ならば得意とするテクニックでルーティン化、楽しく制作しよう」と決めてひたすら面作りをしました。その思いが良かったのか展示、会期中作品が生き生きと誇らしげなオーラを放っているのを覚えました。
Vol.13 桜井 玲子(Sakurai Reiko)
桜井玲子 プロフィール
1967 桑沢デザイン研究所テキスタイル科 卒業
1969 渡仏(~1974 )
1982 新制作展 以降毎年出品
1983 新制作展 新作家賞受賞
1984 個展/千疋屋ギャラリー この後5回開催 東京
個展/不二画廊 大阪
1987 個展/ギャラリー銀鮭(東京)
個展/秋田ステーションホテル(秋田)
新制作展 新作家賞受賞
1988 二人展 (三岸黄太郎・桜井玲子)
(CENTER EURO-ASIE-INSEAD-FRANCE)
現代作家タペストリー10人展
(日本橋髙島屋 インテリア アートギャラリー)
1989 現代作家タペストリーと彫刻展(東京)
個展/ギャラリー無有(京都)この後2回開催
個展/コスモギャラリー(東京)
新制作協会スペースデザイン部会員推挙
1990 建築空間とアート展(京都)
個展/東京テキスタイル・フォーラム(東京)この後4回開催
1992 現代作家タペストリーと彫刻展 草月会館(東京)
1993 日本・海外現代作家タペストリーと彫刻展 草月美術館(東京)
1994 現代作家タペストリー展 富士市文化会館(静岡)
1995 個展/タケダ エキジビット ハウス(鎌倉)
2000 個展/アートライフ・みつはし(京都)
個展/ギャルリーカンディード(東京)この後2回
2003 個展/宮崎県立美術館(宮崎)
2005 個展/ギャラリー藍(東京)この後2年ごと開催
個展/加藤ギャラリー(東京)
2009 テキスタイルNOW展(東京)この後毎年開催
2010 テキスタイルアート・ミニアチュール展(東京)
2018 個展/魚水堂ギャラリー(東京)
新制作協会会員
スタジオA Z主宰
『 彩 』 第50回新制作展(1986年) W2100 x H2170
素材と技法:経糸 ウール / 緯糸 ジュートによる畝織の経絣
「絣とは、織物の発生と同時に、織物の中に必然的に潜在し、まことに自然に織物の素直な命の中から、人間の美意識の発展にともなって、生まれ出た柄であった」と岡村吉右衛門氏は書かれています。その言葉は、私の作品制作の原点となっています。私は、絣の技法の中にひそむ絣足、滲み、ずれ等の美しさに魅かれます。
この作品は、多彩色で渾然とした一色にみえる色面に、絣のずれ、絣足等の要素を付け加えることで、動きと情感のある表現を求めて制作したものです。
『 境界 』
第55回新制作展(1991年) W2400 x H4150
素材と技法:経糸 麻綿混 / 緯糸ジュートレーヨン 畝織の経絣
1988年フランスでの2人展(三岸黄太朗・桜井玲子)の企画をいただいた事がきっかけで、長年使っていた糸の種類を変えてみることにしました。
素材がウールから麻綿混に変わったことで、絣の美しさの探究はおのずと変化してきましたが、形や構図は簡単で単純なものを選択し、素材も又、主張の強い個性的な糸は避けること等々は継続しました。
この作品は、制作手法を変えることなく、絣ぎわの色の揺らぎの効果を表現することで、光や大気の気配を作り出したいと制作した作品です。
『 Untitled : 2016 』
第80回新制作展(2016年) W2200 x H3350
素材と技法:経糸 麻綿混 / 緯糸 ジュートレーヨン 畝織の経絣
私は、もともと色に対する関心が強く、色で何かを表現できると考えています。言葉にかわる力が、色にはあると思うからです。
今回は、あえて赤だけで表現してみたいとチャレンジした作品です。様々なタイプの赤からは、それぞれ違った言葉が聞こえてきます。私の感じとれる赤をみつけだしてゆく、とてもたよりない程の小さな感覚を、大切に制作したことを、おぼえています。
色相の単調さがマイナスにならない様な工夫として、動きや奥行感等の要素を強く意識しました。
私は、簡素で単純なもののなかに、イメージが内包されている作品、そのようなものを絣という手段から離れることなく制作し続けたいと望んでいます。
Vol.12 佐伯 和子(Saeki Kazuko)
佐伯和子 プロフィール
色と質感にこだわったファイバーアートを、ホテルや病院などの公共空間に制作している。
1951年 愛媛県生まれ
1973年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン科卒業
1982年 ストライプハウス美術館
2016年 武蔵野市立吉祥寺美術館
現在まで個展14回開催
受賞歴
新制作展新作家賞
日本クラフト展優秀賞
清州ビエンナーレ(韓国)ベストアーティスト賞
作品収蔵
岡田茂吉研究所美術館
この写真は上段が武蔵野美術大学の卒業制作、下段が卒業時に開いた3人展の様子です。左の作品です。古いアルバムはお気に入り写真20枚位を残してすべて処分してしまったので残っている記録はこれだけです。
大学で教わったのは平織とつづれ織の2種類のみ、それに手紡ぎ糸でつけたグラデーションが唯一の工夫点です。稚拙な作品だと思いますが織ることが楽しくてタピストリー制作を仕事としていきたいという思いが強かった記憶があります。
30歳の時最初の個展を開きました。
それを某ゼネコンの社長が見てくれて、東洋紡の本社にタピストリーを造りませんか?と大抜擢のチャンスを下さいました。
この仕事で必要にせまられて、デザインプレゼンテーションの方法、裏打ちの実施方法、特注金物を作ること、今では当たり前におこなっている諸作業を手さぐりで習得してきました。ターニングポイントとなった最初の作品です。
銀座のACギャラリーという小さなギャラリーで何度か個展をしていました。ギャラリーに勤務していた女性が後に吉祥寺美術館の学芸員になり私の個展を企画してくれました。糸の葉と呼ぶニードルワークです。糸の葉の数はおよそ1万5千枚。1ケ月半ほぼ毎日会場で自分の作品を眺めていました。
この仕事は今も続けていて、今年京都の泉涌寺、高台寺の伝統空間で展示した立体作品へとつながりました。
15年前から琵琶湖湖畔の宗教団体の建物にコイリング技法の抽象的作品を造ってきました。そこに琳派をテーマにした美術館を建てるという計画が起こり、私にも収蔵作品を造るようにと要請がありました。
今まで抽象作品しか造っていないし(大学の授業で鳥獣戯画の模写をしたのが唯一の具象訓練)、琳派とはどのようなものか熱海MOA美術館に紅梅白梅図を観に行くところから始めました。お話があってから5年間試作を重ね四苦八苦の末2つの作品を収めることができました。そのうちの1点「梅林図」です。
振り返ってみると私のターニングポイントは個展だったなと思います。そしてその背景には、新制作展があります。
新しいことをやろうと思う時、まず新制作展の大きな空間で眺めることで気づくことが多くありました。社会に提案する前段階のまたとない練習場でした。織物から始まったのですが、今では全く織っていない作品の方が多くなっています。これもSD部で多様な素材、技法を見ることが出来たおかげだと思います。
Vol.11 川島 源次郎(Kawashima Genjiro)
川島 源次郎 プロフィール
1977 長崎県生まれ
1999 新制作展 初入選
2002 佐賀大学大学院教育学研究科修了
2004 新制作展 新作家賞受賞(同`06年受賞)
2005 ヘルシンキ芸術デザイン大学(現アールト大学美術・デザイン・建築学部)へ留学
2007 GJアートレインボー展(ドイツ)
2007 新制作展 会員推挙
2008 アジア芸術祭(韓国)
2008 佐賀銀行文化財団新人賞
2017 一般社団法人 金富良舎(コンプラシャ)設立
2018 三人の手しごと展(福岡 weeksギャラリー)
2019 三人の手しごと展(福岡 ギャラリータジェール)
1977年長崎県波佐見町生まれ。佐賀大学大学院教育学研究科修了。
2005年からヘルシンキ芸術デザイン大学へ留学し、フィンランドの美術教育を学ぶ。
現在は、福岡女学院中学校・高等学校で美術教師として勤める傍ら、彫刻・木工・デザインの作家としても活動中。
「子どもたちの未来に必要な教育とは?」をテーマに全国各地で様々な実践研究を行いながら、「教員研修」「職員研修」「教育講演会」など教育関係者や行政・自治体、保護者に対して講演会やワークショップも行う。
2017年には地元長崎県波佐見町に、一般社団法人金富良舎(コンプラシャ)を設立し、波佐見町を拠点とした文化・アートの交流事業や陶磁器商品の開発を行う。金富良舎のサイトはこちら https://comprasha.com
新制作協会スペースデザイン部 会員
福岡女学院中学校・高等学校 教諭
一般社団法人 金富良舎 理事
「bind」2004年 第68回新制作展新作家賞 W260×D100×H230(cm)
「木と麻ロープ」
私が大学院生の時、加賀谷先生に、北陸地方や飛騨高山地域へ連れて行ってもらったことがあります。その時に訪れた白川郷・合掌造りの家の屋根裏で、木の梁(はり)同士を縄で接合した建築様式を目にしました。江戸時代に建てられたという民家の梁は、長い時間をかけて囲炉裏の煤(すす)で燻されて黒光りし、それが白い縄とのコントラストでとても美しいと感じました。また、白川郷には古くから「結(ゆい)」という相互扶助の心が大切にされており、豪雪による厳しい自然環境の中で、家同士が助け合うという考え方が根付いていることにも感動しました。この時の印象を基に、木と縄を組み合わせた作品をつくりはじめました。また、「結」の解釈を「結ぶ・連結する・縛る」へと展開し、ジョイントに麻のロープを使って、何度か新制作展にも出品しています。この作品は3連リングを床から空間へ展開し自立させたもので、リングとリングを麻のロープで繋いで固定しました。リングには構造上の強度が必要だったので比較的、強度と粘りがあるタモの集成材を使いました。床には支持体の役割として、リング状にくり抜いた鉄板を敷き、作品を自立させています。
「bind」2004年 第68回新制作展新作家賞 W260×D100×H230(cm)
「水の庭」2012年 第76回新制作展 W200×D35×H35(cm)
「点と線と面」
大学を出て10年くらいは立花克樹氏と共同で元農業用倉庫だった建物を借りて制作していました。大学のような大型機械や設備はありませんでしたが、広くて静かで、とてもいい環境でした。そこは、家具づくりの盛んな福岡県大川市まで車で15分くらいの立地でしたので、いろいろな種類の木材が手に入りやすく、よく馴染みの材木屋さんに頼み込んで、ウォールナットやオーク、メイプル、ビーチなどの無垢材を小売りしてもらいました。その頃に、たまたまパウル・クレーについて書かれた本を読んで「ユークリッド幾何学」や「非ユークリッド幾何学」というものを知りました。一度、自分なりにクレーを真似て、基礎的な概念「点と線と面」について考えてみようと思ったのがきっかけです。はじめは、球を鉄芯に串刺して、数珠のように連続させたり、球体から板状へとフォルムを変えながら連続させたりといった作品をつくりました。徐々に、水滴や植物などのイメージを足し算して、テーブルやレリーフをつくりました。この作品は球体と円柱を一つのフォルムにしようと試みた作品です。有機的な曲線によって空間の歪みをつくろうとしました。ウォールナットの無垢材から鋸(のこぎり)で形を切り出し、鑿(のみ)で彫り、鉋(かんな)で曲線を整えていきました。木材加工の中では、鑿や鉋を使う「手仕事」が中心で、時間と体力を要しますが、無垢材を削るが、とても気持ちがよかったのを覚えています。
「CUT-SAW」2018年 第82回新制作展 W150×D50×H50(cm)
「分解と再構築」
大学で出会った木工を出発点として、20年以上が経ちました。アートやデザインの世界、また美術教育の世界に、ヨチヨチとですが関わらせてもらっています。その間、個人的には住む場所や生活環境もいくらか変わりました。大きなところでは、社会の産業構造や、自然環境もずいぶんと変わってきました。おそらく私以外にも多くの人が、自分や社会のことを否応なしに考えなければならない時代になったのではないかと思います。そんなある日、父親から「お前が生まれた時、3町分(1町=100m×100m)の杉と檜の苗木を植えた。その時の杉と檜がこうなったんだ」と杉林を見せられました。聞くところによると、私のひい爺さんが、焼き物の窯用に薪仕事をしていた山があって、子どもが生まれたらそこに苗木を植え、一人前になる頃に、建築材料として使用する、といった慣習があったそうです。その話から、昔の人の「自然と共存する生活」と、それを継承していこうとする地元の「地域性」により関心を持つようになりました。(地元長崎で取り組んでいる社会活動のサイトですhttps://comprasha.com)そのことを背景に「もっと素材そのものと向き合いたい」という思いが強くなり、丸太を材料にした作品をつくり始めました。この作品は杉の丸太を5分(約15mm)の厚みにスライスして、隙間をつくることでリズミカルな空間を生み出そうとしたものです。なんとなくですが、オブジェでもなく、家具でもないものにしたいと思いました。木材の特性の一つは「組む・継ぐ・接ぐ」などの接合方法にあります。寄木技法などにも見られる「一度、加工して、再び接合する」というところに木材の面白さを感じて「分解と再構築」というテーマに至りました。
Vol.10 金子 武志(Kaneko Takeshi)
金子 武志 プロフィール
<主な創作活動>
1958 東京三鷹に生まれる。大学で建築を学ぶ。
1981 小野襄造形研究室に所属、新制作展初入選
1985 新制作展 新作家賞受賞(同’89年受賞)
1990 新鋭作家展(銀座・ホリギャラリー)
1996 「ONOJIN思考 個から共生へ」(グループ展・パルテノン多摩市民ギャラリー)
1997 横浜アイデアコンペティション準グランプリ受賞(横浜ファッション協会)
1998 「実験マニア」(グループ展・銀座ホリギャラリー)
1999 新制作協会 スペースデザイン部 会員推挙
2001 「あかり・かたち・くらし展」(創作ユニットDIG・横浜・陶心庵)
2002 「ARTWORK ARTWARK展」(グループ展・銀座・月光荘)
2004 「NEGA↔︎POSI展」(グループ展・銀座マキイマサルファインアーツ)
2008 明治大学国際日本学部開設記念特別展示(明治大学博物館)
2010 「空間の彩展」(グループ展・銀座・画廊るたん)
2013 産廃サミット参加出品(2013〜17 赤坂・+PLUS)
2014 T’s Room展(個展・原宿・デザインフェスタギャラリー)
2015 COLOR WORKS(個展・赤坂・+PLUS)
2018 ものづくりシェア工房「monoATelieR」ディレクション(世田谷経堂)
<社会活動等>
日本デザイン学会教育部会主査
SEBIT 東京都専門学校アート&デザイン展 委員長
アート&セラピー色彩心理協会会員
日本デザイン福祉専門学校クラフトデザイン学科主任教授
昭和女子大学外部講師
合同会社 アート&ヒーリング はなえみ 代表
︎T's Room (Kaneko Takeshi monoism)
→https://kane41.wixsite.com/ts-room
︎WEB SEBIT2021 東京都専門学校アート&デザイン展
→https://sites.google.com/view/websebit2021/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
︎日本デザイン福祉専門学校 WEB学校展
→https://www.ndwc.online/
『風来坊』 第48回新制作展(1984年) W3000 ×D900 ×H1500
素材と技法:エポキシ樹脂と金属粉によるFRP工法
私が現在続けてこられているのはこの作品があったからだと思います。
師事していた当時SD部会員の小野襄氏が主宰する造形研究室で材料調合や造形技法を学びながら何とか出品していた頃、4回目の出品でまだ20代半ばです。前年の新制作展では落選してしまい、色々と上手くいかないことも多く、もう制作をやめてしまおうとも考えていた年でしたが、結婚し子供も産まれたこともあり、何でもいいからとりあえず思い切りデカくてバカげたものを作りたかった記憶があります。
縮尺モデルを作って先生や先輩にも指導してもらえるよう工夫もしました。サイズを色々検討したのですが結果としてモデルの倍率設定を謝り、本来は1/8にすべきところを、欲を出して1/10設定にしてしまいました。ただただ大きくしたかった、若い時期にありがちなパターンです。経験不足のため、スケールが少し上がるだけで手間は大きく跳ね上がることが全く分かっていません。当時の年齢だから何とか作れましたが。
『風来坊』 第48回新制作展(1984年)
1/10スケールモデル(素材と技法:エポキシ樹脂と金属粉によるFRP工法)
この作品にはこんなエピソードがあります。
制作の終盤、何とか全ての型を外してほっと一息。手伝いの学生スタッフと夕食に出かけて戻ってきたら大仰天。離型のタイミングが早すぎて作品は無残にも倒れてしまいました。樹脂素材は硬化しているようでも完全に固まるには養生の時間が必要なのに読みが甘かったです。徹夜で大補修をして何とかギリギリ搬入までには間に合いました。
何とか入選は果たしたものの、オーバースケールで突拍子もない問題作は、皆から面白がられはしましたが評価はイマイチ。そんな展覧会のある日、新制作創設会員の猪熊弦一郎先生が奥様と一緒にSD会場に見学に来られた際、何と私が呼ばれあれこれ質問を受けるという機会がありました。
「とてもユニークな造形だけど、どうやって作ったの?材料は何?」と聞かれ「樹脂を使いました」と答えると「僕もプラスティック(アクリル絵具のこと?)で絵を描いてるよ、今度僕のアトリエに来て作り方を教えて下さいね」と..。私みたいな若輩になんて優しい言葉を掛けて下さるのか。本当に嬉しく嬉しくて..。
作品は人によって見方も自由、感じ方も様々なのだ、ということも教わった気がします。制作を続ける原動力になった大事な出来事でした。
『触覚と赤 ー 100の記憶』 第62回新制作展(1998年) W3600 ×D1800 ×H1200
素材:エポキシ樹脂、金属粉(ブロンズ粉他)、木材各種、色材(顔料、染料、着色剤)
職場であるデザイン専門学校の工房を利用している私は、学生達と一緒に制作する機会も多くありました。私も学生時代には新制作展を目指す先輩達の制作を手伝い、美術館への搬入にも同行させてもらった刺激的な思い出があったので、そのような経験を彼らと共有したいという気持ちが常にありました。
それまで授業の延長と称して(笑)学生に制作を手伝ってもらうことは多々ありましたが、何かもっと同じ目線で一緒に作品を創るという意識を持ちたかった気がします。スペースデザイン部では「協同制作」を認めているので何回かグループでの制作を試みましたが、それとはまた少しことなる感覚です。単なる手伝いではなく、一つのテーマを巡って一緒に作り、それぞれの想いや表現が集められて作品になる、そのような方法を模索してみました。当時少しずつ登場し始めた「ワークショップ」というスタイルに着目し、自分のゼミ生や仲間に呼びかけ、経験を共有するものづくりを展開してみました。この作品では制作プログラムも皆で考え、記号対応させることで制作をプロセス化し簡単に伝達・共有することを意図しました。造形の授業の延長のようなやや教育的な側面が感じられます。
『触覚と赤 ー 100の記憶』 第62回新制作展(1998年) W3600 ×D1800 ×H1200
素材:エポキシ樹脂、金属粉(ブロンズ粉他)、木材各種、色材(顔料、染料、着色剤)
テーマの「赤」は、テキスタイル作品には多く見かける色なのに、男性が比較的多い立体部門ではあまり使われない傾向があったので、色でドッキリさせたくて選んだテーマです。また「触覚」というキーワードは、実際に手で触ってもらうことを目指しました。「様々な赤の、様々な感触に実際に触れてみる」というコンセプトです。これまで何回も触ることができる作品を制作しましたが、美術館の発表では中々難しいこともあります。子ども達は喜んで触りますが、壊れされたり、勢い他の作品も触ってしまいクレームも出ました。現在スペースデザイン部では触ったり、座ったり、動かしたりすることを許可する作家も増え、SD部の特徴の一つとして捉えていただけるようになりました。
『A ⇔ Z(Password,please!』 第79回新制作展(2015年) W270~ ×D270~ ×H30
私はこれまで色々なテーマで作品を制作しました。技法・素材・スタイルにこだわらずその時々の出会い(人・モノ・コト)からインスピレーションを得て制作に臨みます。
この作品は「株式会社ナカダイ」との出会いがきっかけでした。この会社は単なる産廃処理業者ではなく、再利用を新たな視点で捉えビジネスチャンスを生み出す企業です。その会社が主催した「産廃サミット」というクリエーターや学生、企業が集まるイベントに学生達と参加しました。その時に出会った素材がLANケーブル(コンピューターなどIT機器の配線に使われる)の廃材です。
色とりどり(10色程度)のケーブルは熱で簡単に溶け、慣れないアイロンとクッキングペーパーを道具にして成形しました。形を考える際には、親しみやすいモチーフとして数字・アルファベットを造形することにしました。特にLANケーブルの色数と素材の軽さと肌さわりを活かし、自由に触れて動かせる遊具的な作品を目指しました。新聞紙やガラス瓶などこれまで色々な廃材をアレンジして作品を作ってきましたが、研究室や新制作で出会った先生や先輩たちの影響がこのような表現につながっているとつくづく思っています。
『A ⇔ Z(Password,please!』 第79回新制作展(2015年) W270~ ×D270~ ×H30
子ども達は積極的に遊んでくれます。実際には随分壊れていましたが....。
アルファベットのオブジェはA〜Zの順番に並べたがります。完成すると得意げです。
Vol.9 片岡 葉子(Kataoka Yoko)
片岡 葉子プロフィール
女子美術大学 産業デザイン科 工芸専攻 卒業 <個展、グループ展、公募展>
1985 新制作協会展(以後毎年出品)
1991 個展 千疋屋ギャラリー /東京(2000,2004)
1995 FIBER AS ART 1995年〜2001年 ギャラリースペース21 /東京
1998 個展 銀座ワコールアートスペース /東京
第4回 国際”掌中”新立体造形公募展 /名古屋
1999 第6回 国際テキスタイルコンペティション’99−京都ー /京都
2002 第3回 国際ミニテキスタイルコンペティション バルセロナ/スペイン
MINIARTEXTIL COMO コモ/イタリア (2003, '04, '05, '06, '07, '08)
2003 個展 ギャラリー ギャラリー /京都
JAPAN IS TALKING バルセロナ/スペイン
2005 FIBER AS ART "SIBORI" 千疋屋ギャラリー/東京 アンジェ/フランス
2006 国際 レース ビエンナーレ ブリュッセル/ベルギー
2007 JTCテキスタイルの未来形2007 沖縄/(’08札幌、’09福岡)
2008 個展 ギャラリー水土木 /東京
2009 日本—ウクライナミニテキスタイルアートSession展KCCギャラリー /東京
2010 第1回国際テキスタイルアート・ミニアチュール /東京
(2011東京、’13東京,伊丹、‘15東京,金沢、’18東京,ソウル,福岡、’19東京,伊丹,ソウル)
2011 ”予期せざる出発” 女子美美術館 /神奈川
日本ファイバーアート展 多摩美美術館 /東京
"The Nature Spirit" /サラマンカ,マドリッド/スペイン
2012 日本、ウクライナ、テキスタイルアート交流展 /東京
第7回国際ファイバーアートビエンナーレ 南通/中国
2013 第14回国際テキスタイルトリエンナーレ ウッジ/ポーランド
2014 “Reconnsider Ⅱ” 入谷画廊/東京(’16,’18,’20)
2015 Miniature Works-kyoto-Vol.1 /京都
個展“GENESIS” 入谷画廊、/東京
International FiberArtsⅦ セバストポル/アメリカ
2016 PaperBiennialRijswijik2016 ライズワイク/オランダ
2019 ミニアチュール展“THE KYOTO Vol.2” /京都
<受賞>
1988 新制作協会新作家賞(1990,1991年)
2006 MINIARTEXTIL COMO “PREMIO MANTERO” /イタリア
2013 14th International Triennial of Tapestry”Honary Prize” /ポーランド
2015 International Fiber ArtsⅦ”Best of Show” /アメリカ
日本テキスタイルカウンシル 会員
① “森のこだま” 1997年 w/420 h/110 d/8cm
第6回国際テキスタイルコンペティション-京都-(京都文化博物館/京都)
2回の落選を経ての1987年の初入選以来出品してきました。大学では織物を学びましたが織の制約なく自由に形作れるフェルトに出会いさまざまな作品を作りはじめ、1997年のこの作品でやっと自分の思いが表現できた気がしました。インドで出会った鳥の巣、また卵、虫の抜け殻など、生き物の気配のするものに心惹かれての制作です。
② “The Interval” 2005年 w/300 h/350 d/120cm
個展(ギャラリーギャラリー/京都)2005年
フェルトの作品を15年程つづけましたが、もっと薄く軽く、光や風を通す素材を求めるうち真綿に出会いました。初めは木の枝に真綿を張っての制作でしたが、しずく型の籐に真綿を張り、藍で染めたピースを無数集めた作品となりました。光、雲、泡、水など、記憶の中の一瞬の情景を表現、体験できたらと。展示する場所でまったく違った世界になる興味がありました。
② “The Interval” 2005年 w/300 h/350 d/120cm
2007miniartextilecomo(COMO /ITALY) 2007年
③ “GENESIS” 2015年 w/1200 h/250 d/10cm
個展(入谷画廊/東京)
真綿の作品を15年余りつづけるうち金網に出会う機会があり、織物でもある金網に糸を巻き、紙を貼って鉛筆でフロッタージュしたピースで作品をつくるようになりました。植物の芽吹き、アメーバや細胞の発生、増殖、雲や山、島の発生など、自然界の不思議に魅かれます。これは個展の作品「GENESIS」創世記で、世界のはじまりをイメージしています。
Vol.8 加賀谷 健至(Kagaya Takeshi)
加賀谷 健至 プロフィール
昭和 38 札幌市生まれ
平成 2 新制作展/以後毎年出品/東京都立美術館
加賀谷 健至展/個展/札幌時計台ギャラリー/札幌
平成 3 91’新潟の美術展/招待/新潟市立美術館
平成 4 第3回現代日本木刻フェステバル/関市文化センター/岐阜
平成 5 第11回朝日現代クラフト展/うめだ阪急百貨店など/大阪
平成 6 第7回全国ウッドクラフト公募展/兵庫
平成 7 北海道本庁舎/地下連絡路 「風の記憶」3点 作品設置/北海道
平成 8 札幌芸術の森クラフト全国公募展96/札幌芸術の森美術館/北海道
平成 9 ヘルシンキ芸術デザイン大学 客員研究員(現アアルト大学 フィンランド)
平成 10 冬の企画展1998 /BAU ギャラリー/ヘルシンキ/フィンランド
平成 11 木と生活文化展99/ホテル京セラ/鹿児島
平成 12 新制作展 新作家賞受賞/ 13年も受賞/東京都立美術館
南風の生活文化展2000/サンあもり/鹿児島
平成 13 新制作協会 受賞作家展/画廊るたん/銀座/東京
平成 14 新制作協会 会員推挙
ビアマグランカイ4/札幌芸術の森美術館/北海道
第2回全国 木のクラフトコンペ/小田原アリーナ/神奈川
平成 15 加賀谷健至展/個展/画廊るたん/銀座/東京
酒の器・展/金津・創作の森美術館/福井
平成 16 空間アート展/ギャラリーユニグラバス銀座館/銀座/東京
平成 18 加賀谷健至展/個展/ギャラリー・オカベ/銀座/東京
平成 19 空間の彩展/画廊るたん/銀座/東京
平成 21 加賀谷健至展/個展/さいとうギャラリー/北海道
平成 22 ビアマグランカイ8/アウラ野々村賞受賞/札幌芸術の森美術館/北海道
津別ウッドクラフト展2010/最優秀賞/つべつ木材工芸館/北海道
平成 23 札幌芸術の森 開園25周年記念展
「北海道クラフト展2011」/招待/札幌芸術の森美術館/北海道
平成 25 北海道の木の椅子 100人の木の椅子展/札幌芸術の森美術館/北海道
スペースキューブ展/新制作協会SD部/建築会館ギャラリー/東京
平成 26 クラフトで乾杯/審査員特別賞(小泉誠 選)/札幌芸術の森美術館/北海道
平成 27 茶 今日のしつらえ/招待/札幌芸術の森美術館/北海道
加賀谷健至展/個展/ギャラリー日の丘/北海道
JRタワー・アートプラネッツ2015 /
楽しい現代美術入門3 越境する「手わざ」たち /
企画展~ アートと工芸のはざまから/プラニスホール/北海道
平成 28 0歳からのげいじゅつのもり/企画/札幌芸術の森美術館/北海道
平成 29 新制作 北海道ゆかりの作家たち展/本郷新記念札幌彫刻美術館/北海道
SHELVESⅡ 小オブジェ展/オリエ アート・ギャラリー/青山/東京
平成 30 札幌JRタワー アート・プラネッツ 2018/プラニスホール/北海道
その他、個展、グループ展多数
<作品設置およびコレクション>
北海道本庁舎(道庁)地下連絡路/佐賀県立美術館/札幌芸術の森美術館/津別町/
その他 ホテル マンション 個人宅など
① 「風のハーモニー」 第55回新制作展出展 150×300×180㎝
新制作展に挑戦して間も無い頃の作品です。自身のスペースデザインとは何か?絶えず迷いながら制作を続けていた頃の作品。いまだにその答えは私の中では出ていませんが。この作品にはちょっとしたエピソードがあります。まだ新制作展が東京都美術館で開催された頃の話。毎年、オープニングの午前中に、当時、お元気でした猪熊弦一郎氏が三部門の会員、協友、一般出品者の作品を分け隔てなく一点一点丁寧に御覧になっておられました。猪熊氏が来られるとぞれぞれの部門の会員の方々は直立不動に見えました。そんな中、まだ学生だった私は、猪熊氏が私の作品の前に来られた時に、勇気を出して「猪熊先生、アドバイスお願いします。」と声をかけました。ここではどんなお話をいただいたかは私だけの宝物にしたいと思います。問題はその後。猪熊先生が会場から出られた後、ベテランの会員の方に、「先生に対して失礼だ!」とこっぴどく叱咤されました。しかしその時は猪熊氏とお話しできたことの嬉しさがいっぱいで、そんなお叱りの言葉など、うわの空でした。そんな私も気づいたら、叱咤された会員の方と同世代になってしまいました。
② 「支えあう かたち」 第65回新制作展出展 新作家賞受賞 150×150×60㎝
この作品は北欧で勉強する機会を得て、主な滞在先だったフィンランドから帰国して間もない頃の作品です。大学院時代、恩師から見せていただいた、北欧デザインの本で強烈な感銘を受けた作家、タピオ・ウイルカラに憧れ、ただただ彼の国で勉強したい、という一念でフィンランドに向かいました。私が生まれ育った北海道とフィンランドは自然や気候等とても似ている環境でした。そんなこともあり、彼の造形は私の中では、すんなりと身体に溶け込み、またその造形感覚も私なりに理解できました。また彼の作品や資料を通して、彼の妻であるルート・ブリック、カイ・フランクや建築家のアアルトなど多くの偉人の功績に触れられて貴重な時間を過ごすことができました。さらにマリメッコのデザイナーである石本藤雄氏とのお付き合いも楽しかった。この作品は当時、私の器では盛り切れないほどの多くの貴重な体験を抱えつつ、その宝物をいかに自身の作品につなげていくか、良い意味で試行錯誤していた頃の作品です。今、見るとすごく気負っている気がします。
③ 「時の刻みかた〜森人のために〜」 第72回新制作展出展 100×100×8㎝ (壁面 2点)
最後の作品は、北欧での貴重な体験を、少しずつ自身の表現に反映しつつ、やっと作品として自身のかたちになってきたと思う頃の作品です。ちょうど立体から壁面へ作品が展開し始めた頃。私は、この作品の制作以降、新制作展では壁面の作品を中心に発表しています。私の造形は、原案から余分な要素を削り出し、最後に残った状態から制作が始まります。そのような行為を重ねていくうちに、自然と立体(床面)からレリーフ(壁面)に変わっていきました。歳を重ねてきて、生活の中では断捨離なる言葉がひと昔前から言われ始めましたが、もしかしたら、その感覚に少し似ているのかもしれません。
Vol.7 尾埜行男(Ono Yukio)
尾埜行男 プロフィール
1946年 栃木県佐野市生まれ
1969年 日本大学生産工学部建築工学科卒業
1973年 東京造形大学助手(~2012年教授退職)
1976年 第40回新制作展「分枝」、初出品・初入選、 第43回展、第45回展,新作家賞
1982年 第46回新制作展 会員推挙
1994年 第9回国民文化祭三重、審査員奨励賞
2000年 第10回AACA(日本建築美術工芸協会) 特別賞(共作)
2002年 第7回国際日時計コンテスト プロ部門グランプリ受賞 (LE OMBRE DEL TEMPO, ITALY)
<展示会等>
1992年 日時計展 新宿スペースゼロ
2008年 時の記念日 NICT情報通信研究機構
2011年 日時計に魅せられて 退職記念展 東京造形大学美術館
2012年 世界の日時計コレクション展 佐野市市民ギャラリー
2013年 日時計の魅力展 杉並区西荻図書館
2014年 太陽にいどむ 相模原市立博物館
2014年 手のひらの太陽 INAXライブミュージアム
2016年 時間をめぐる、めぐる時間の展覧会 三軒茶屋キャロットタワー
<日時計設置>
国立天文台三鷹、国立天文台野辺山、明石市天文科学館、核融合科学研究所、東京国際大学、宮城大学、足利大学、川口高等学校、与野高等学校、杉並学院中学高等学校、井荻中学校、桃井第一小学校、桃井第四小学校、
見沼自然公園、鳥栖市蔵上公園、佐野市こどもの国、シグマ建設、日本まん真ん中センター、ハルズ・キッチン、ふく楽舎、喫茶穂高、その他個人宅など。
<所属>
日本日時計の会会員、英国日時計協会会員、新制作協会会員
① 「分枝 」第40回新制作展(1976) 180×80×90(cm)
初めて制作出品した作品です。
大学を卒業後、小野襄先生に師事して造形研究を行っていました。
そして7年が過ぎたころ、先生より出品の誘いを受け制作しました。
"かたち”としてはテーブルのようですが、使えないテーブルです。
全体の形状は二つに裂いて一方を伸ばし、もう一方が湾曲しています。
裂いた双方、雄型と雌型いずれも“かたち”という考え方です。
工学部で、如何に効率良く無駄なくスマートに作るか、を勉強した身としては真逆を行いました。
表面はごつごつと凹凸だらけで、中央には鼻らしき障害物が出ています。
迫力を感じますが、とても使えないテーブルです。
② 小野かおる氏作品 「日時計」(1988) 75×75×60(cm) SD部春季展出品作品
自分以外の他の作家の作品写真を載せても良いものかどうか判かりませんが、
この作品は、私の作品作りにとって正に転機となりました。
或る時、氏から日時計の本を渡され、時刻の振り方について調べるように言われました。
それが上の写真の作品ですが、これ以外に日時計関係の作品を1つ作っておられます。
そして数年が経ち、私は氏に請うてその日時計のテーマをいただきました。
(画像:東京造形大学退職記念展図録より転載)
③ 「時錐」第61回新制作展(1997) H:208(cm) 設置:国立天文台三鷹
第55回新制作展(1991)から日時計作品を発表し始めました。
やがて日時計について調べている内にその奥深さに魅了され、翌年、新宿のスペースゼロにて“日時計展”を開催し、日時計制作を宣言しました。
日時計は、基本的に太陽の光を受けて影が示す位置により時刻を知る道具です。
私たちは太陽の位置や光が物に当たった時の影の方向でおおよその時刻を知ります。
古くはエジプトで3500年前に使われた携帯型日時計が発見されています。
Vol.6 岡本泰子(Okamoto Yasuko)
岡本泰子 プロフィール
1990 東京藝術大学美術学部工芸科卒業
1992 同大学院美術専攻科工芸専攻修了
1990 国立科学博物館古生物第3研究室技術補佐員(〜1992)
1993 東京藝術大学非常勤講師(〜1995)
2000 文星芸術大学(〜2013)2014 文化学園大学 准教授(〜現在)
<展覧会>
1995 新制作展(1997, 2001新作家賞受賞)(〜現在)
2002 こころのパンプロジェクト展(トルコ)(〜2003)
2005 新制作協会 会員推挙
2007 シルクロードプロジェクト展(ローマほか)
2010.11.13.15.17.19テキスタイルアート・ミニアチュール展1~6(東京・大阪・金沢・福岡)/ほか
2011 The Nature Spirit 展(スペイン)
2013 - 2014 スロバキア 日本交流ミニアチュール展-外交樹立20周年記念-(スロバキア)
2016 第3回日本トルコ友好作品展 (東京・ギャラリーマルヒ)
2017 縒-染織開設50周年記念展 (東京藝術大学 陳列館) その他、グループ展、個展など
<著書・掲載書籍>新版 絶滅哺乳類図鑑(丸善)、動物デッサンテクニック(誠文堂新光社)、
動物がすき!(福音館書店)、小学館の図鑑 NEOシリーズや国立科学博物館での展示解説イラスト
(常設展示、大恐竜展、生命大躍進、ラスコー展ほか)など
新制作協会会員/JTC 日本テキスタイルカウンシル理事/文化学園大学 准教授
① オフルーム技法との出会い 『 Blue'94 』 (W800㎝×H200㎝)
素材:サイザル麻(片撚り)/技法:フリーテクニック(針で編む)/構造:skipped linking
学生の頃、大学の先輩かつファイバー界のパイオニアである嶋貫昭子先生の集中講義があり、ファイバーアートとオフルーム技法の世界を知った。
もともと素材と構造で表現する立体作品に興味があり、オフルームでの制作展開に憧れていたが、いきなり素材を使いこなせる訳も無く、仕方なく織機を使った技法で模索していた。それから数年後、嶋貫先生のご自宅で洋書を読む勉強会「puzzle会」に参加する機会に恵まれた。
そこでは、Peter Collingwood著 “THE MAKER'S HAND A Close Look at Textile Structures ”(1987)(糸状の要素が機能的な構造を有すものを中心に作り方を分析、図式化したもの)に掲載されている世界の手仕事をテーマ毎に和訳しサンプルを作る。その中で後の道標となる、ある技法に出会った。
それはパプアニューギニアの民族が身につける装飾品を解析したもので、本来はもっと小さく緻密な構造なのだが、織作品で使っていたサイザル麻で試作したところ、元の装飾品とは全く異なる伸縮性のある強い構造の布が出来上がった。
素材の違いで独特の編み目や畝が生じることに興味を持ち、この技法による作品づくりが始まった。
織機によって織られた布と、編むことで面となった布では、作業の制約や布の性質が異なってくる。
それまで素材感として扱っていたサイザル麻が、より無理なく形を成す方法としてこの技法は適していた。
絣糸で編んでみると織物とは違ったステッチのようなディテール表現が可能になった。
針と一本の糸というシンプルな技法だが、むしろ応用が可能であり、制作展開への可能性を感じた。
この技法で翌年第59回新制作展に初出品、初入選した。
Peter Collingwood著 “THE MAKER'S HAND A Close Look at Textile Structures ”(1987)
②「命を内包する」かたちで生命感を与える
『 nest 2009 』 (第73回新制作展 W20㎝×D20cm×H20㎝)
素材:糸芭蕉 /技法:フリーテクニック(編む) /構造:skipped linking
1994年より自宅での制作となり、狭い空間で大きな作品制作をする手段として、ユニットやパーツ構成による方法で表現した。平面的に扱っていたパーツのジョイント方法を工夫し、立体的な表現を試みた。任意の位置を染める事に作為を感じ、素材のままで形と表情を見せる作品制作へと変化する。
大きな作品は、吊ってテンションを加える事で膜状構造建築のような表情を出す醍醐味があるが、素材自身では立体として自立出来ない。
2009年、SD部にミニアチュール部門が設置されたことをきっかけに、支持体なしで自立する立体作品に取組んだ。この年は「自然からいただいた命」を大変身近に感じており、素材も自ら現地で収穫する事に拘った。
③ 新たな表現 『 nest 2011-1 』(第75回新制作展 W20㎝×D20cm×H20㎝)
素材: レーヨン /技法: ニードルワーク
2010年から生活環境が変わり、ひたすらパーツを編むといった制作が難しくなった。
そこで同テーマでの新たな表現技法として「刺繍ミシンで糸を不規則に縫い重ねて面を作る」ことに着目した。家庭用ミシンの中には縫製機能に加えて、刺繍機能を持つ「刺繍機つきコンピューターミシン」というものがあり、一般的には内蔵された文字・模様・キャラクターのデータを服や小物に刺繍する目的で使われる。その中でも専用ソフトによってオリジナルのデザインが縫える機種を使用し、造形表現での利用を試みた。一般的に入手可能な機材・素材を利用し、変換データの出力や手仕事のみでは難しい造形表現が可能な興味深い技法である。このように「命を内包する形」をテーマに、繊維素材を使ったオリジナル技法の立体作品を制作してきた。
同時に古生物に命を吹き込む復元画「サイエンティフィックイラストレーション」も手がけており、かたちや構造の美しさを見つける貴重な場となっている。
これからも環境によって表現方法やサイズを変えながら「自然形態への興味→作品へと昇華」という関係を続けて展開の可能性を探っていきたい。
Vol.5 今村敬子(Imamura Keiko)
今村敬子 プロフィール
1952 京都に生まれる
1974 個展 ギャラリー射手座
1975 個展 ギャラリー射手座
1980 第44回新制作展入選(以後毎回入選) 東京都美術館、 個展 ギャラリー射手座
1981 “Alte Technik-Neue Form” ハノーバー(1982年ハンブルグに巡回)、個展 ギャラリー射手座
1983 第47回新制作展 新作家賞 東京都美術館(第48回も受賞)
1986 個展 ギャラリーマロニエ
1987 第51回新制作展 会員賞(以後毎回出品 東京都美術館、国立新美術館、京都市美術館、兵庫県立原田の森ギャラリー)
1991 個展 ギャラリーマロニエ
1992 ’92美術選抜展 京都市美術館、染 織-京都からの発信 京都府文化博物館
1993 個展 ギャラリーマロニエ
1994 現代の美術 国立国際美術館、染アート展 京都市美術館
1996 個展 ギャラリーマロニエ
2001 今村敬子テキスタイル展 アートライフみつはし
2004 今村敬子テキスタイル展 アートライフみつはし
2007 今村敬子型染展 アートライフみつはし
2008 音を視るー 色を聴く アートライフみつはし
2010 今村敬子型染展 アートライフみつはし
2012 今村敬子型染展 アートライフみつはし
2013 Best Selection 2013 東京都美術館
2014 今村敬子型染展 アートライフみつはし
2015 今村敬子型染展ー風鳥星草 ギャラリエH2O
2017 今村敬子型染 アートライフみつはし
2019 今村敬子型染布展ー松・風 ギャラリエH2O
① カンムリバト 204 cm x 204 cm 型糊防染 生成り木綿布 植物染料 1972年
この古ぼけた写真は、京都市美術館で開催された精華短期大学作品展に出品した卒業制作の作品です。
60cm角のパネル9枚の組み作品で、カンムリバトのいろいろな表情のスケッチから、できるだけ余分なものを省いて単純化して型を彫り、白黒で構成しています。精華短期大学(現在精華大学)の美術科染織コースに入って、織り染め一通りの技法を学ぶ中で、一番気に入ったのが型染でした。
この作品を褒めてもらって嬉しくなり、作品作って発表して行けたらいなあと思いました。
② 今村敬子テキスタイル展 エントランス作品 180 cm x 7200 cm x 90 cm
スクリーンプリント 綿ローン 反応性染料 2004年
卒業後は京都市内の現代美術やクラフトの作家が発表していた『ギャラリー射手座』、『ギャラリーマロニエ』で個展をしました。鳥をテーマに染めた布をパネルに貼り、壁面展示していましたが、布の持つ特性<柔らかさ・空気を通す・光も通すなど>を生かして、オープンな空間で作品を見せたいと思うようになりました。
そんな時、新制作会員仲間の桜井玲子さんが、新しく銀閣寺にできた『アートライフみつはし』で個展を開きました。大文字山のふもと銀閣寺参道から一筋入ったところは大きなお屋敷が並ぶ住宅地、その中にあって、広くはありませんが外光の入るモダンな展示空間で、二階がオーナーの住居です。前の駐車スペースと奥にお庭もあり、ゆったりとした雰囲気でいっぺんに気に入り、その後は2~3年おきに個展をしました。
ギャラリー前の広い軒先は風に揺れる吊り作品展示にうってつけで、毎回いろいろ工夫して展示しました。
これは2度目の個展のときの作品で、ローンの生地に鳥の羽のパターンを少しずつずらして、スクリーンプリントしてもらいました。この展示が75回記念新制作展の三部合同展示の宙吊り作品に繋がりました。
③ Scene 18 ー 波・松・風 208 cm x 336 cm 糊型防染 綿オックスフォード 反応性染料 2018年
最後の一点は、一昨年の新制作展の作品で、美術館1階のSD部の展示室ではなく、野外展示場前の休憩
室壁面に展示しました。(参考写真:③-2)このスペースは天井高は低いのですが、広い壁面で外の光がいっぱい入り、野外展示場からも見えます。この時は続けて個展をしてきて、ちょっと一息の年で、少し違った作り方を試そうかと思い、天橋立に行った時の印象から作りました。天橋立は有名な観光名所ですが、私はそれまで行ったことがなくて、京都駅から特急『はしだて』に乗って2時間ちょっと、ウキウキしながら向かいました。海のすぐそばの旅館に泊まって、二日間ゆっくりと橋立の周りを気の向くまま巡りました。この時の松林、潮風、初夏の光のイメージをテーマにモチーフを作り、デザインしました。この作品を基にして、昨年ギャラリエH2Oで型染布展を開き、衣服への展開も試みました。(参考写真:③-3)
(参考写真:③-2)
(参考写真:③-3)
Vol.4 伊藤哲郎(Ito Tetsuro)
伊藤哲郎 プロフィール
1976年 東京造形大学ヴィジュアルデザイン専攻卒業
1979年 大学の恩師のアトリエ/設計室MORIに入室.12年後に独立
1987年~1999年.日本デザイン専門学校非常勤講師
1991年 (株)ネクサス・プランニング/一級建築士事務所を東京都国立市に設立
1994年 東京都小平市に本社移転
2006年 静岡県浜松市に本社移転
2011年~2015年.浜松市景観審議会委員
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1980年~新制作展出品.(1988,1990,1996年に新作家賞受賞)
1995年 長崎県住宅コンクール優秀賞受賞
2000年 天竜/木の家デザインコンクール優秀賞受賞
2002年 天竜/木の家デザインコンクール優秀賞受賞
新制作協会会員/一級建築士/静岡県文化財建造物監理士/静岡県建築士会まちづくり委員
1.「DER SCHWARZE-SPANNENDE WALD」 1988年.第52回新制作展出品(w.2400 x d.600 x h.600)
1980年の初出品から数年間は、普段の建築設計の延長線のように設計図面をもとに計画を進め、木材やエポキシ樹脂を使った作品を制作していました。今思えばかなり堅苦しい制作プロセスでした。そんな中、ちょっとした悪戯と発見から展開し出来上がったのがこの作品です。木炭粉を混入したエポキシ樹脂で、ストッキングの繊維構造が作る面白いフォルムを定着させました。様々な素材の実験や仕掛け・道具の検討、力とフォルムの呼応といった制作過程での収穫が、その後十数年間の作品の糧となりました。
2.「saner V」 2007年.第71回新制作展出品(w.2400 x d.750 x h.1800)
今ではほとんど使われなくなったコンクリートの排水桝を利用した作品でシリーズの三作目です。土木建材屋の店先でこのコンクリート桝達に出会ってから、私のコンクリート作品が始まりました。全部で7種類のバリエーションがあったかと思います。2方、3方から来た排水が円形の桝の中で合流する、その合流点の機能一辺倒の無作為の造形が何とも愛らしく感じられました。既存の製品からモジュールを抽出・展開し、水の流れるフォルムをアレンジしながら擬人化した作品です。コンクリートも樹脂と同様に固まれば強固な素材ですが、硬化前は流体で形のない素材です。形を得るまでのプロセスも樹脂と似ています。
3.「saner VIII」 2011年.第75回新制作展出品(w.2400 x d.750 x h.600)
1は樹脂の軽さがフォルムを作る作品。これはコンクリートの重さがフォルムを作る作品です。ビニールの米袋にコンクリートを流し込み、台に腰掛けたり寝そべったりさせながら硬化させました。その重さでパンパンに張ったビニール袋のフォルムがコンクリートに移し込まれます。フォルムの実験には水を使うのですが、コンクリートの比重はその2.3倍ですので、ある程度は想定しながらも一発勝負の力業やアドリブが必要となり、それが又、予想外の効果を生むこともあります。樹脂とストッキング等を使った過去の作品とも類似していますが、制作者の行為がダイレクトに作品のフォルムに反映される感覚や、硬化した後は手も足も出せない、その潔さみたいなものに魅力を感じていました。
Vol.3 伊藤順(Ito Jun)
伊藤順プロフィール
1970 山形県生まれ
1998 新制作展 初出品(’99年を除き以降毎年入選)
2000 上越教育大学大学院修了
2001 グループ展「木のかたち」展
2001 世界工芸コンペティション金沢2001
2007 グループ展「木のかたち」展
2009 新制作展 新作家賞受賞(同’11年受賞)
2013 新制作協会 会員推挙
作品1「seeds #4 ricochet」2005年 第69回展出品 H180 W150 D70
一つ目の作品は、新制作展に一般で応募していた頃のものです。当時、薄い木材をしならせたり反らせたりして曲線的で有機的なフォルムを表現したいと思っていた私にとって、この形はある意味終着点のようなものでした。しならせた薄い板を繋いで、できるだけ大きな空間で完結させることを目指していたからです。米ヒバを薄く製材したものを麻紐で縛って繋ぎ合わせ、気球のような形にしてあります。「気球のような」と言いましたが、何か種のようなものが跳ねているとか弾けているようなイメージで考えたので、作品名に仏語で「跳ねる」を意味する「リコシェ」を入れています。下の尖った部分は杉の角材から鉋で削り出して十六角錐にしてあり、気球部分と真鍮の棒で繋いであります。台は曲線に切断した鉄を溶接して作離ました。この作品を完成させ自分では満足したものの、会員の方からの評価はあまり高くはなく、自分にとって転機となったと言えます。それは、「こんなものを作りたい」という思いが強く、それを全て一つの作品に入れ込みすぎた結果、表現が過多になってしまったからです。「言いたいことが多すぎて何を言っているのかわからない」という講評を頂き、眼から鱗が落ちたような気がしました。
作品2「ロトス」2013年 第77回展出品 H180 W120 D120
三つ目の作品は「ロトスシリーズ」の5作目です。ずっと木をしならせたり反らせたりしてきて、ついに「曲げる」ことを始めた作品です。アイロンを使っての曲げ木を作品に取り入れました。角材を水で濡らして、濡れた布で包んでアルミホイルを巻いたものを、アイロンで加熱して曲げます。1mmにつき1分加熱するので、1cm厚の木材なら10分加熱し、型にはめて冷ますときれいな曲面を作ることができます。同じように曲げた木材を、交互に並べてボルトで固定し、溶接した鉄の上にやじろべえのようにのせてあります。ふわふわと動く感じが、軽快で気持ちの良いものになりました。木を曲げることで、作品の可能性が大きく広がった作品でした。
作品3「ロトス #5」2017年 第81回展出品 H50 W250 D60
三つ目の作品は「ロトスシリーズ」の5作目です。ずっと木をしならせたり反らせたりしてきて、ついに「曲げる」ことを始めた作品です。アイロンを使っての曲げ木を作品に取り入れました。角材を水で濡らして、濡れた布で包んでアルミホイルを巻いたものを、アイロンで加熱して曲げます。1mmにつき1分加熱するので、1cm厚の木材なら10分加熱し、型にはめて冷ますときれいな曲面を作ることができます。同じように曲げた木材を、交互に並べてボルトで固定し、溶接した鉄の上にやじろべえのようにのせてあります。ふわふわと動く感じが、軽快で気持ちの良いものになりました。木を曲げることで、作品の可能性が大きく広がった作品でした。
Vol.2 五十嵐通代(Igarashi Michiyo)
五十嵐通代プロフィール
東京生まれ
新制作協会会会員 /日本建築美術工芸協会会員
2004 第9回家庭画報大賞展 審査員特別賞受賞 リヤドロ賞受賞
2004 第40回神奈川県美術展 特選受賞
2006 第70回新制作展 初入選 (以後2007年を除き毎年出品)
2007 第13回真綿のヴィジュアル ・アート フロスシルク賞受賞
個展 ギャラリー『茶の実倶楽部』築地
2008 第14回真綿のヴィジュアル・アート 織り染賞受賞
2008 第83回国展入選
2009 第15回真綿のヴィジュアル・アート 佳作
2013 第77回新制作展 新作家賞受賞
2013 第24回Arte & Arte
International Exhibition of Contemporary Textile Art /イタリア
2014 新制作受賞作家展『建築会館ギャラリー』
2014 第78回新制作展 新作家賞受賞
2015 新制作受賞作家展『建築会館ギャラリー』
2015 第79回新制作展 会員推挙
2015 第14回KAJIMA彫刻コンクール 模型部門入選
2016 JOSHIBISION 女子美術大学選抜展
2017 Affordable Artfair/ロンドン
PLASTIC Art Seoul/韓国
2018 個展 ギャラリー『LEGION』神保町
個展 ギャラリー『gallery gallery』京都
2019 三人展 gallery『るたん』銀座
『秋色』 2004年 第40回 神奈川県美術展 特選受賞(W900×H1800)
若い時に出会った「織り」でしたが、長いブランクがあり、すっかり忘れていました。
横浜元町の入口近くにあるギャラリーの店頭に神奈川県美術展の応募葉書が置いてあり何気なくそれを家に持ち帰り葉書を見ているうち、落選になるかもしれないが応募してみたいという気持ちになりました。
後日、県の方から電話で特選を告げられた時は、本当にびっくりしました。
自分の思いを素直に、ただただ織ったものが、他の人に認めて頂けた事がとても嬉しかったです。
この作品がスタートになりました。
『ERODE』 2013年 Arte & Arte International Exhibition イタリア(W130×D130×H200)
いつも惹かれていた金属を使用して初めてテキスタイルを立体にしました。
新制作のミニアチュール部門に応募しましたが残念ながら落選。
少し落ち込みましたが、その後同じテクニックを使い試行錯誤して制作した『ERODE』(侵食)をイタリアのテキスタイルの公募に出してみました。
作品が入選でき嬉しい気持ちでした。そのうえ会場の垂れ幕と図録の表紙、H Pのタイトルバックに一年間採用していただいて、とても光栄でした。
本当に小さな作品でしたが、金属と糸を使ったその後の制作のきっかけになった作品です。
イタリア コモ 展覧会会場垂れ幕
展覧会図録表紙
『夜の音』2013年 第77回新制作展 新作家賞受賞(900×1500)
『ERODE』の技法を発展させてステンレス線と手紬の麻を使い織りました。
織り上げたパーツを床の上に何気無く置くとそのパーツがウネッと動いてまるで生きているかの如く、
ステンレスの放つ光沢と糸のマットな感じが混ざって鈍い光になる気がします。
見る角度で光も変わってきます。何か、得体の知れない物体を生んで、育てている様に制作しました。
Vol.1 雨山智子(Ameyama Tomoko)
雨山智子プロフィール
1979 文化女子大学卒業
1888~新制作展(1995、2003新作家賞受賞)
1993 目黒雅叙園アートプライズ (同1996)
個展 (ギャラリーアメリア / 同2000)
1997 タピストリー新進作家4人展 (織絵ギャラリー)
1998 素材を追って-繊維によるこころみ (世田谷美術館ギャラリー)
1999 個展 (ワコール銀座アートスペース / 同2002、2005)
2000 タピストリー新進作家6人展 (織絵ギャラリー)
第5回国際掌中新立体造形公募展 (吹上ホール)
2003 素材でつくる空間 展 (OZONEリビングデザインギャラリー)
2005 5P 展 (AU HASARD)
2006 5人展—素材との出合い (画廊るたん)
玉川高島屋ショッピングセンター南館エントランスホール作品制作(1年間展示)
2007 テキスタイル展(玉川高島屋ルーフギャラリー)
2010 Reconsider—ファイバーの世界で(千疋屋ギャラリー)
2013 テキスタイルアート・ミニアチュール3 百花百粋(Gallery 5610)
2014 ReconsiderⅡ(いりや画廊 2016同Ⅲ 2018同Ⅳ )
2017 個展(いりや画廊)
2018 TEXTILE WORKS 60 (銀座煉瓦画廊)
新制作協会会員/日本建築美術工芸協会会員
恵泉女学園高等学校、日本デザイン福祉専門学校、東京家政大学 講師
①「ピンクの雨がふっている」 1988年 第52回新制作展出品(W2680×H1400)
初出品、初入選の作品。
大学でテキスタイルデザインを学んだが、デザイナーになるより自分の作品を作り続けたいと考えて、教員になっ10年目。現場が荒れていた時代で公立中学校では日々の仕事に追われて制作する時間と手立てがなく、母校の私立学校に移って少しずつテキスタイルの作品をつくり始めた頃である。学生時代のような設備も環境もなく、手描きでできる友禅の技法を勉強したり、版画をやってみたりなど迷走していたが、小さなパーツなら家でもシルクスクリーンのプリントができるので、30〜40cmの三角形のパネルを組み合わせた作品をつくることを試み始めた。やはりプリントの技法が自分にとって一番心地よいと感じたのもこの頃で、それは現在まで継続している。
「ピンクの雨がふっている」というタイトルは、同じ年に南青山のギャラリーでグループ展の当番をしていた時に窓の外の風景からイメージしたものである。当時は「言葉」と「作品」の関係にとてもこだわりを持っていた。
「空間の作品」という意識より、「自分の作品」を広い場所に展示してみたいという気持ちが強かったのではないかと思う。写真は別の場所で撮影したものだが、東京都美術館の地下のスペース、煉瓦の壁面への展示で、背景や空間が異なると作品の印象が大きく変わることを実感した。
②「夢の残像G・H」 1996年 新制作協会新鋭作家展出品
前年の第59回新制作展で新作家賞を受賞し、翌年銀座のホリギャラリーで行われた新鋭作家展(現受賞作家展)に出品した作品である。(会場写真が見つからず、その後設置された北海道の病院の写真。)受賞した東京都美術館での作品も、長方形のパーツを組み合わせたものだったが、この作品では、小さなパーツを使用しても、画面全体に大きな流れを持つようにしたいと考えて、くの字型のラインやグラデーションがパーツを超えて配置されるように工夫した。意図を生かした作品になったと思うが、小さなパネルひとつひとつをプリントした布で包んでボルトで組んでいるので、パネルとボルトの分量と重さが難点だった。1988年の初出品後、仕事や私生活で環境が大きく変わったが、毎年新制作展に出品しなくてはと思うことによって、制作を続けることがようやく定着してきた頃である。また、作品だけでなく取り巻く空間そのものが作品であるという意識が生まれたのはこの時期だと思う。
モチーフの形態とグラデーションの色彩が、空間に新しい空気感を生み出すようにしたいと強く思っていた。恵まれた時代で、展覧会会場で公共の場所への制作の誘いや打ち合わせが行われ、その後の制作の仕事へのきっかけとなった作品でもある。
③「時を刻むー記憶の庭」 2010年 第74回新制作展出品(W850×H3400)
以前から、スパイラルホールで発表されたテキスタイルのインクジェットプリンターに関心を持っていたが、2005年の個展で初めてインクジェットによる捺染布を使った作品を考えた。それまで自宅に具象的なプリントをする設備を持っていなかったので、写真をそのまま布地にプリントできることに感激し、それまでの手作業によるプリントと組み合わせた作品を制作した。技法の面白さに惹かれて次々と作品をつくり、写真を取り込めることから各地方の名所旧跡や風景をテーマにした作品の発注等が続いた。数年間技法に引っ張られる感じでの制作が繰り返され、少々疲れてきた頃、久しぶりに制作したいものと、出来上がった作品のイメージがぴったりと一致したのがこの作品である。写真撮影の段階で、余白となる部分をどのくらいつくるか、手捺染のグラデーションと連動させるためにどのくらいの陰影を出しておくようにするかなどを意識しないと、思い描く作品にならないことも徐々にわかってきた頃の作品である。(インクジェット捺染は外注)今でも、時折とてつもなく細かい文様を刷毛で染めてみたくなったり、手の込んだ刺繍などをやってみたくなる。しかし、プリントというスピード感にあふれ、味わいもなくそっけない質感の技法から、自分なりのイメージを新しく生み出すことができるのではないかと考えることが、制作を続けていく原動力になっているのではないかと思っている。